台湾危機問題で私が講演したことに関し、質問が寄せられていて、本日から返事を書こうと思っている。それに関連して、考えるべきことが多いので、順不同でブログでも書いていきたい。これを最後に整理して、質問した方に書簡を出すつもりである。

 

 私に対する質問の第一は、私が中国による武力行使の阻止を第一に掲げているが、中国がそういう方針をとるのは、台湾に独立志向があるからではないかということだった。その独立志向こそを緊張が高まる第一の原因にあげないといけないのではないかという問題であった。

 

 これは、「中国は一つ」という原則とかかわるので、複雑な問題ではある。しかし、まず一般論として述べると、たとえ一国内の問題であっても、ある地方が独立志向を強めることに対して、中央政府が武力で弾圧することは決して許されないことである。

 

 現在の世界では、たとえ一国の内政問題であっても、それが重大な人権侵害を生み出すものであれば、国際の平和と安定を阻害するようなものとして、国際社会が関与する対象になる。南アフリカのアパルトヘイトを理由に国連が経済制裁を実施したことなど、いくつもの事例が存在する。中国にかかわる問題でも、あの天安門事件に際して、国連安保理は中国が常任理事国なので何もできなかったが、欧米日はそれなりに協力して中国に対する経済制裁を実施した。

 

 独立問題も同じだ。だから、独立問題を抱える国は少なくないが、民主主義国家ならば、独立を主導する勢力を武力行使で威嚇することはしない。ケベック州を抱えるカナダ政府、カタロニアやバスクを抱えるスペイン政府が、最後の手段として武力行使もあり得るなどと発言したことを聞いたことはない。独立を阻止するために中央政府がやるべきこと、やっていることは、あくまで平和的な言論で説得することなのである。

 

 中国は独裁国家だから、そんな民主主義の理屈は通じないかもしれない。しかし、中国には通用しなくても、武力を行使して多くの人々を傷つけるような政策、方針を持ってはいけないと、たゆまなく説得すべきだろう。

 

 それとも、中国だけは、その例外として扱うことができるのだろうか。あるいは、「中国は一つ」という原則が、例外扱いを可能にするのだろうか。(続)