自分の言う通りに政府が対策をしたら感染は抑えられると主張する人は多いけど、本当にそうかなと思ってしまう。どんな変異株がでてくるかは人がコントロールできるものではないし、人に行動変容を求めるやり方についても、人の考え方はそれぞれ違うのであって、政府がそれをコントロールできるというのは全体主義だったり、20世紀型の破綻した社会主義だと思うからである。

 

 ネットの記事だったが、現在感染が広がっているのは、ワクチン接種が進んで人の心の中に安心感が生まれているからだという説が出ていた。それって、それなりに核心を突いていると思う。イギリスもアメリカもイスラエルもオランダも、安心を求めてワクチン接種を大規模に進め、かなり進んだ段階で規制を解除した。その後の大規模な広がりを見て、もう一度規制をみたいな話になっているが、これって人の心に響かない。日常を取り戻そうと長い間ずっと努力してきて、ワクチンを接種すれば大丈夫と言われ、接種したとたん、「それではダメだ」と言われても、納得できるものではない。

 

 日本でも若者をどうするかという議論があるけれど、若者は自分が重症化しないけれど、「あなたの行動次第でおじいちゃん、おばあちゃんが感染するから」と説得され、一年間ガマンを続けてきた。その結果、おじいちゃん、おばあちゃんの世代のワクチン接種が進んだとたん、「それではダメだ」と言われているわけである。納得できるはずがない。

 

 デルタ株の脅威というのは、自分たちはこれまで正しい政策を遂行してきたけれど、予想外のものがあらわれてきたからこんな状況になっていると説明できるので、ある意味で言い訳として使われている面がある。もちろん、デルタ株の脅威は認めた上だけれど。

 

 ワクチン接種が進み7割程度に行き渡れば集団免疫を獲得するって、専門家がみんな口を揃えてきた。菅さんだってそれを信じ込んたため、ワクチン接種以外には関心を示さないのだろう。ところが尊敬する尾身さんが7割ではダメなのだと言っている。

 

 言ってもいいのだが、じゃあ、これまでの説明はなんだったのだろうか。あなたの説明を信じてがんばってきたのに、その説明が間違いだったと言われたら、信じた国民はどう反応すればいいのだろうか。古い説は間違っていたんですか、では新しい説を信じますというようにはならないだろう。

 

 国民が現局面で何らかの行動変容をするとしたら、この一年半、いろいろな対策を国民に強要してきた政府、専門家の人たちが、なぜ自分が見通しを間違ったのかを自己批判し、国民に対して謝罪し、その上で国民にお願いをするときだけだろう。きっと。