本日で連載終わり。マンガ評論家の紙屋高雪さんの「党内の自由な議論を根拠に処分されるべきではない」というタイトルのブログ記事をめぐる問題だ。https://kamiyakenkyujo.hatenablog.com
 
 最後は分派に至らない派閥は認められるか、という問題である。そうはいっても、規約の上では、「党内に派閥・分派はつくらない」とされているので(第3条)、派閥もダメなのだが、しかし自民党の派閥に対しては効用を認めているのだから、分派のように〈党に敵対的〉という印象のあるものと違って、党にとっても意味のある派閥はあるのではないかと感じるのである。
 
 現実の運用はなかなか厳格である。私が党本部にいた頃、事務所の建て替え問題があって、新しい事務所の各部局の部屋では火災対策のために冷蔵庫を置かないという方針が出たことがあった。それは困るなということで、他の部屋をよく調べたら、設置するのを許されているところがあったので、そのことを書記局に「おかしいではないか」と言いに行ったら、「部局の間で横の連絡をとりあうのは規約違反だ」と言われた。規約には「横の連絡をしてはならない」とは書かれていないが、この分派禁止条項の解釈でそういうことになっているのであろう。
 
 でも、いまの例のように、事務的に連絡を取り合うのでもダメというのは、現実とはあまりにもかけ離れている。共産党の各種の会議に出れば、党員同士が知り合うことになるのだが、そういうつながりで知り合った仲だから、どこかで会った時、話題にできるのは党の政策や方針以外にはない。党員であること以外は知らないのに、党のことは話題にしないで、「お子さんはお元気ですか」なんて聞くって、ありえないだろう。
 
 だから、横のつながりはダメという考え方は、現実には通用しないのである。現実的でないことを方針にすると、誰も規約を守らないことを容認するか、全員を処分するしかなくなってくる。分派をつくって党指導部に対抗するということは禁止するにしても、そこに至る前の段階のどこまで連絡を取り合うのを認めるのか、ある基準が必要なのだと感じる。それを派閥と名付けるのかどうかは分からないけれど。
 
 最後に、処分されたり除籍されたりした人の話を聞くと、その決定をめぐる規約の解釈に間して異論を提起しても、「いや、規約解釈の細則があって、そこではこう決まっている」と相手にされないという話を聞く。民主集中制という呼び方は同じでも、この間、「循環型の運営」などとして考え方が変わっている面もあると思うのだが、そういうことと無縁に知らない所に「細則」があったりして、それが昔と同じなら、実質的に変化がないことになりかねない。党員をしばる「細則」があるなら公表し、それを含めて承認して入党するようにならないと、規約を自由主義的に解釈し、あとで「こんなはずではなかった」という人が出てくるのではないか。規約の解釈権限は一人ひとりにもあると思うので、最終的な解釈は議論して決めればいいんだろうけれど。
 
 最後は紙屋さんが提起した問題を超えてしまった。そこまでは期待しないけれど、紙屋さんがそのうち続編を書いてくれるとうれしい。(了)