現在進行中の本についてご報告。まず本日はこれである。

 

 『原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴んだ事故原因』

 

 ちょっと長めで、著者も少しちゅうちょした期間があったみたいだ。しかし最終的に、「これが自分の心情をよく表している」と了解してくれた。

 

 その著者の北村俊郎さん、タイトルのように「原子力村の中枢部」にいた方だ。日本原子力発電といって、電力9社が出資して日本で最初につくられた原発専門の会社。そこで理事(取締役)で社長室長を務められ、退職後は福島県の富岡町に移り住まれた。3.11事故から10年経って、いまだ避難中である。

 

 事故直後から「なぜ防げなかったのか」を発言していたが、10年間、さらに深く考えてこられた。原子力村の中枢にいた人でなければ分からない事故原因が、この本で明かされることになる。最後に「おわりに」から著者の思いを少し引用する。

 

 「筆者は日本初の商業炉を建設しその後に東京電力の実質子会社になった日本原子力発電に約四〇年在籍し現場や本社を経験した。その後、日本原子力産業協会に移籍するなど、まさに原子力村の真っ只中にいた。普段から電力会社やメーカーの原子力部門や関係諸団体、そして原発立地地域との接触が多かった。そこで見たのは、人類の叡智である原子力を国民のために活かそうとする使命感と潜在的危険を顕在化させない情熱が半世紀をかけて徐々に蝕まれ、政産官学さらには地方自治体や地元住民までを巻き込んだ巨大な運命共同体がどんどん閉鎖的になっていく姿であった。(本書「おわりに」より)