佐藤さんの産経新聞への寄稿は、形式からして奇妙である。画像で分かるように6段の記事なのだが、3段目までは(つまり半分は)「正論」対談を紹介した5月31日の産経新聞の報道記事の引用である。そして最後の1段半は共産党の不破さんのかつての本からの引用である。つまり、佐藤さん独自の分析は1段半しかないことになる。これで6段分の原稿料をもらえるのだろうか(笑)。

 

 というのは冗談だが、他党の党首を批判するタイトルをつけた寄稿だというのに、新聞の報道記事を主に論拠とするのは、かなり異例だろう。いや、佐藤さんを含む対談の紹介記事なのだから、産経新聞の記者が佐藤さんの意を汲んでいい記事を書いたから、たくさん引用しても構わないというだけかもしれないけれど。

 

 ただ、その産経の記事は、かなりズレている。横尾さんと佐藤さんの「正論」での対談は「革命路線に変わりなし」というタイトルで、産経の記事も「共産党は不変」というタイトルが付いていて、当然、暴力革命の路線に変わりがないということが、佐藤さんの言いたいことだろう。ところが、産経の記事で引用しているのは、ほぼ二つのこと。皇室への対応と憲法九条への対応である。

 

 そして、引用された記事で佐藤さんは、「共産の皇室観について「隠していないでしょ。廃止(の立場)ですよ」と断言した」とある。また、「「9条改正反対には変更はない」とも強調した」とされている。

 

 つまり、「変わりなし」ということの論拠とされているのは、天皇制と9条についての立場が「変わりなし」ということなのである。それは共産党の立場の紹介としてはいいけれど、暴力革命の路線に変わりなしということの証明にはなっていないのである(「正論」では長々と話しているので、別途論じるけれど)。

 

 どちらかと言えば、これでは理解が間違っていると思うのだ。憲法も国体も英語では同じconstitutionという言葉を使うことがあるけれど、そのconstitutionを変えようというのは革命政党であり(自民党などのことだ)、constitutionを守ろうという共産党は保守政党である。constitutionを守ろうという共産党を批判するなら、革命政党としての矜持を失ったのかという批判を行うべきだろうと思う。

 

 天皇の問題はやがて憲法改正に行き着く問題ではあるけれど、これにしたってだから暴力革命には結びつかないだろう。そんなことを言い出せば、憲法改正を唱える政党はみんな暴力革命政党になってしまう。佐藤さんほどの知性が、いったいどうしたのだろうか。(続)