はい、出ましたね。枝野さんの政権構想を描いた『枝野ビジョン 支え合う日本』です。

 

 全体的な評価は、すべて読んでからにします。とりあえず、私の関心は安全保障のところにあるので、それだけ読んだ感想を書いておきます。

 

 といっても、250ページもある本のなかで、安全保障ってわずか13ページ分なのです。「地に足の着いた外交・安全保障」というタイトル。安全保障どころか外交も含めて13ページですから、政策全体の20分の1。まあ、中身次第ということもあるし、どちからと言えば日本の経済社会をどうするかが総選挙の主要な争点になると思われるので、短いこともよしとしておきましょう。

 

 中身に入って言うと、悪くないと思います。冒頭、「短期的な外交・安全保障政策について、政権を競い合う主要政党間における中心的な対立軸にすべきでないと考える」とあって、これまでなら共産党などから「自民党と同じだ」という批判が寄せられるところですが、その共産党も安保と自衛隊に関する独自の主張を留保すると述べているのですから、「健全な日米同盟を軸に」とか自衛隊重視は変わりようがないのです。

 

 タイトルにある「地に足の着いた」というのがいいですね。これは、両翼の偏向から距離を置いた表現であり、一方では「平和や憲法九条を唱えるだけで平和を守れるかのような主張も、それはそれで地に足の着いていない議論」を批判しています。これは共産党への注文でしょうね。しかし、この部分の軸は別のところにあって、「集団的自衛権行使容認など、一見現実論のように聞こえる第二次安倍政権以降の外交・安全保障政策の方向も、逆の意味で現実離れしている」ことを言いたいがために、左の偏向にも言及しているのでしょうね。

 

 まあ、つまり、対立軸にすべきでないと言いながら、実際は対立軸を持とうとしている。そして、その対立軸を、自民党の側は現実離れしていて、立憲は現実的だと主張しようとしているわけです。中身はともかく、その手法は大事だと感じます。

 

 では、中長期的な対立軸は何かということ、三つです。地位協定の改定、辺野古新基地建設の中止と新たな米国との協議の開始、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加などの余地が内科について米国との調整です。核兵器禁止条約への参加は、短期的にないだけでなく中長期的にも課題となっていない(オブザーバー参加まで)のですから、「野党連合政権で核兵器禁止条約の批准を」なんて公約はできないということなのですが、現状を見ると、この三つで精一杯というか、ここまで出来ればあっぱれだとも言えるでしょうね。(続)