もし中国が台湾を武力併合するとして、どんな局面でどんなやり方をしてくるのだろうか。それを正確に捉えておくことは、対応を考える上で欠かすことができない。

 

 まあ、いくならんでも、ある日突然、共産党が指揮する中国人民解放軍の陸海空の部隊が、「ここはオレの領土だから」と平然とうそぶき、大挙して台湾海峡を越えてやってきて占領するということは考えられないだろう。ある程度は、武力介入の根拠を世界に示すことは必要なのだから。

 

 中国が武力介入の条件にあげているのは、いうまでもなく、台湾の独立という事態である。ずっと以前のよろん調査では、台湾の中にも統一を支持する人がかなりいたけれど、それはいつか中国の政治制度がもっとまともになるだろうと希望的な観測をしていた時期であり、その希望が潰えたいま、独立願望はかなり広がっている。

 

 独立願望で台湾の人々が寸分の違いもなく一致していれば、中国といえども介入の余地は狭くなる。台湾の人々の一致した世論の中で武力介入するのは、支配していく上でもやりにくいし、世界からの反発も避けられない。

 

 だから、中国が介入するとしたら、台湾の世論が分裂している状況、あるいはそう見せかける状況をつくって行われることになる。独立運動と統一運動が激突し、独立派が統一派を弾圧しているという状況をつくって、統一派(あるいは台湾で仕事している本土の中国人)の命を助けるために、やむなく介入するというケースだ。

 

 これって、1973年にアメリカがグレナダを侵略した時のやり方だったし、ソ連が79年にアフガニスタンに軍事介入した時も、そんな口実だった。覇権国が他国に武力介入する時に普遍的なやり方だ。中国にしたところで、同じことはアメリカもやったでしょとして、自分に言い聞かせることもできるし、世界にアピールすることもできる。

 

 このように考えると、中国に武力介入をさせないために最も大事なことは、台湾の世論が分裂しないことなのだ。武力介入の口実を与えないことなのだ。

 

 一方、独立ということで台湾世論がまとまっていくことは、中国にとっては最もイヤなことであり、武力介入の機会を虎視眈々と窺う結果にもなる。いくら世論が一致していても、口実なんてどうにでもできるというのが、世界の覇権国の歴史的実態でもある。

 

 そうはいっても、やはり台湾世論の一致である。一致が広いものであり、高い水準のものであるほど、中国が介入しづらいのは確かだ。台湾の人々にはそこを期待する。(続)