本日の「朝日新聞」に、東京の立川相互病院のことが出ている(私が購読している大阪版にはないので、写真は電子版から)。民医連の病院だ。病院の窓に、「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり!」というメッセージが張り出されているということで、高橋雅哉院長に取材した記事である。

 

 287床あり、医師は90人。26床をコロナ専用にしてきたが、昨日から新たに高度治療室の全16床をコロナ患者のために使用することにしたという。救急車の受け入れ要請に応えられる割合も、昨年1-3月は80%だったが、今年の同期は55%に激減。病院長は「ギリギリの人員配置で、疲労のために退職者が出れば、将棋倒し的に医療崩壊につながりかねません」と述べたという。

 

 病院がこんな状況だから、新たにオリンピックで医療の負担が増大するのは大変なことである。病院の窓にメッセージを貼りだし、国民にアピールするのは当然のことだと感じる。

 

 この病院長のもっとすごいところは、オリンピックの中止を求めるにあたって、それに参加するために努力してきた選手への敬意を忘れなかったことだと思う。記事は、病院長の言葉を引きながら、以下のように結ばれている。

 

 「選手の方たちの、常人には想像もつかない努力の積み重ね、関係者の方たちの開催に向けたご尽力を考えると非常に心苦しい」としながら、五輪による感染拡大の可能性に言及し、「反対せざるを得ない」と訴える。

 

 一方、昨日の「赤旗」。志位さんの記者会見の内容が一面トップに載っているが、病院長のような選手への敬意、心遣いというものがまったく存在しない。ただただオリンピックには中止以外の選択肢がないことを、これでもかあれでもかと解き明かしていく。逃げ場のないところに追い込んでいくような手法である。

 

 

 オリンピック中止というのは、あくまで感染回避のための手段の一つである。ところがこれではオリンピック中止が目標みたいになっているというか、悪のイベントを相手に戦っているようだ。

 

 池江璃花子さんに対してオリンピック中止を求める人から、「オリンピックに反対しろ」とか「辞退しろ」とかのメッセージが寄せられているという。そういう雰囲気をつくりださないためにも、立川相互病院の院長のようなアプローチに学んでほしいものである。