この問題が、日本と世界の安全保障及び外交の最重要問題になっている。それをどう捉え、どう行動するのか、よくよく考えておかないと、しっぺ返しを食らうことになるだろう。ということで、思いつくままを順不同に書いていく。

 

 いちばん大事なことは、問題の出発点であろう。アメリカが台湾を最大の軍事的焦点と位置づけ、日本と周辺での軍事演習等を活発化させ、日本をそれに巻き込もうとしており、そういう日米の動きへの批判が左翼界隈では活発である。しかし、日米がそういう動きをするのは、もともとは中国が台湾への武力介入を想定し、軍事活動を推し進めているからである。

 

 中国は、20世紀後半の一時期、台湾の武力統一という方針を放棄し、平和統一路線に転換した。しかし2005年、「反国家分裂法」を制定することによって、条件次第では武力行使することを正当化した。

 

 さらに近年、尖閣諸島への海警局の船の進入を常態化させている以上に、台湾周辺での軍事活動は活発である。台湾の防空識別圏への進入はほぼ毎日という事態が常態化して、台湾空軍は負担に耐えかね、今年3月からスクランブルによる対応を取りやめたという。

 

 1996年、中国が台湾周辺での軍事演習を行い、アメリカが対抗して空母を派遣して威嚇し、その時の中国はすごすごと引き下がった。しかし、もうそれは過去の時代の出来事であって、ここで何事か起きれば、中国は軍事的にはアメリカを圧倒できるようになっている。

 

 そこから中国の本気度も生まれているわけだ。それに対抗する日米の軍事対応を批判するにしても、そうした中国の出方が出発点にあることによって生じている問題なので、批判の最大の矛先は中国に向かうのでないと、この問題に対する見方を根本のところで誤ることになると考える。

 

 中国は、台湾や日本、グアムを標的にできる地上配備型の中距離ミサイルを1250発以上配備していると言われる。何か事あらば、この地域の米軍基地はひとたまりもない。トランプが大統領の時、ロシアとのあいだで結んでいたINF条約が失効したが、2国間条約であったため、中国はその間に周到に開発、配備を進めたわけである。

 

 それに対して日米が軍事的な対応を少しもしてはならないというのでは、中国側がこうやってミサイル配備を進めたことに対してなぜ黙っていたのだ、という批判も寄せられるだろう。要するに、何を主張するにしても、聞いている人が、「これは本質的に中国を批判しているのだ」と理解されるような批判をしないといけないのだと感じる。(続)