本日は憲法記念日ということで、新聞もテレビも関連報道がされている。あまり改憲に意欲のなさそうな菅総理も、本日だけは産経新聞1面に登場しているし、護憲派は護憲派で、集会やら新聞への意見広告やらで気勢を上げる日である。

 

 ただ、率直に言わせてもらうと、私は、すでに改憲論議は終わったと思っている、秋に出す本の第一章のタイトルにも、「改憲論議は終わった」と付けている。

 

 だって、安倍さんがあれだけ国政選挙で連戦連勝し、衆参の3分の2を与党で占めることもあり、あれだけ意欲を示したのに、ピクリとも動かなかったのだ。いくら意欲のある別の人が出てきたところで、そんなことに力を注ぐ余裕はないだろう。

 

 秋に出す本は、そういう前提で書いたので、タイトルは憲法問題を意識させないものにした。それでも、出版社に相談してみると、中身にはそれがまだ色濃く残っているということで、「これでは出せない」という返事が複数社から寄せられた。出版不況の中にあるこの業界は、倒産しないためにも読者の動向には敏感で、読者が憲法問題の本を求めなくなっていることは、当たり前の現実になっている。だから私も、第一章を、「改憲論議は終わった」と明確にして、その見地で全体を書き直すことで、ようやく出版の了解が得られた次第なのだ。

 

 それでも菅さんが本日も改憲すると述べているのは、改憲を望む人々へのリップサービスのようなもので、改憲を口にしないと支持が減ることを意識しているからに過ぎない。護憲派も、改憲派の改憲意欲が変わらないことを強調しないと、自分の存在意義が低まることになるので、そうしているだけではないか。だから、表面では改憲が引き続き焦点になっているように見えるが、実際には次のステージをどう捉え、どう移行するかが、どの勢力にとっても大事になっていると考える。

 

 私自身の結論は明快である。その第一章のタイトルに、「九条と自衛隊が本格的に共存する時代へ」とも付けていることで、意図は分かってもらえるだろう。

 

 本日の朝日新聞の掲載された世論調査を見ても、改憲を望む人にその理由を尋ねると、「国防の規定が不十分だから」が圧倒的にトップである。結局、その問題をクリアーしないと、いつまでも改憲論議はくすぶる。

 

 安倍さんの「加憲」案も、九条と自衛隊の共存が求められる現実を、安倍さんなりに工夫したものであった。しかし、もはや改憲が現実味を失ったもので、では現行九条のもとで自衛隊のあり方を本格的に探るのが、改憲派にも護憲派にも求められていると感じる。そうでないと、時代に取り残されてしまうだろう。