一昨日、外務省が「外交青書」を公表し、尖閣をめぐる記述ぶりが話題になっていた。中国は、外務省報道官を出し、「中国の脅威を大げさに誇張し、悪意をもって中国を攻撃して中傷し、内政を不当に干渉するものであり、われわれは断固反対する」と強く反発し、外交ルートを通じて日本に対して厳正な申し入れを行ったそうである。外務省としては、それだけ強い表現を使って中国を牽制したということだ。

 

 日本のメディアでは、中国の行動を安全保障上の脅威と位置づけたにとどまらず、国際法違反だという外交青書の記述に注目したものが多かった。NHKは「『中国海警局の領海侵入は国際法違反』外交青書に初めて明記」と報じたし、産経新聞も「海警の活動『国際法違反』」という見出しで報じている。

 

 

 ところが、「赤旗」の見出しは違っていた。「海警法『国際法違反』明言せず」となっている。NHKや産経と180度異なる評価であるように見える。いろんなメディアを丹念に見る人は違和感を持ったことだろう。

 

 

 ただ、普通の人に通じるかどうかはともかく、「赤旗」には言い分があるのだろう。外交青書では海警局の領海侵入を「国際法違反」としているが、海警法について言うと「国際法との整合性の観点から問題がある」と別の表現になっているので、確かに「国際法違反」という言葉を使っているわけではないのだ。

 

 共産党は海警法も海警局の船の領海侵入も、双方を「国際法違反」と強調しているので、「共産党のほうが政府より中国批判のトーンが強いのだ」として、売りにしようとしているわけだ。長年。中国のことを高く評価してきたため、挽回に必死になっているのである。中国寄りのイメージを払拭するには長い時間がかかるだろうけど、がんばってほしい。

 

 ただ、外交青書の言葉が柔らからといって、批判が弱いかというと、そう簡単ではない。外交に使われる言葉って、なかなか微妙なのだ。

 

 たとえば、我々は、国連憲章では武力行使が「禁止」されていると理解している。しかし、それを規定した2条4項を見れば分かるように、武力行使については「慎まなければならない」とされているだけである。英語正文でも、「prohibit」ではなく「refrain」という抑制的な言葉である。

 

 しかし、だからといって、「赤旗」が使ったように「国連憲章は武力行使『禁止』明言せず」とはならない。外交関係においては、この程度の言葉であっても、「禁止」と同じ位置づけになるのだ。

 

 まあ、だから、あまりそんなことで「うちのほうがすごいぞ」なんて威張らないほうがいいと思うんだけどね。どうでしょ。