昨日の続きのような投稿である。安全保障の問題は、政権を担おうとする政党にとって逃げられない問題だが、いまの野党共闘の構図では議論そのものがされないような気がする。それを恐れる。

 

 参議院長野選挙区での候補者である羽田さんと共産党の政策協定では、「日米同盟に偏った外交を改め、東アジア諸国との関係を改善する」とあった。これに対して、国民民主党の玉木さんが反発し、いったん推薦を白紙に戻す。羽田さんは、その直後、玉木さんとの間で「国民民主党の綱領に同意し、同党の重点政策にも最優先で取り組む」と記した文書を結ぶことで、同党から「再推薦」を得た。その重点政策の該当部分は、「日米同盟を基軸に着実な防衛力整備を進める」というものである。ただし、防衛力の整備と言っても、綱領(画像)にあるように、「専守防衛」を堅持する立場からのものである。

 

 野党の政権を含む共闘を進めるにあたり、共産党が安保廃棄や自衛隊解消という独自政策を、その共闘に持ち込まないと述べているのは、よく知られていることだ。長野の政策協定も、この共産党の立場の枠内にある。だって、日米同盟や防衛力整備そのものをどうするという話ではなく、それはそれとして外交は改めようということに過ぎないからだ。共産党は、安全保障政策で突っ込んだのではないということだ。外交の議論ということなら、立憲や国民も否定することはなかろう。

 

 立憲の綱領や政策も、「健全な日米同盟を軸に」であり、「専守防衛」である。だから、共産党を含む野党政権ができるにしても、それらが確認され、共産党は異を唱えないという構図になっていくと考えられる。玉木さんが、それを理由にして反発することもないと思われる。

 

 しかしこうやって、米中対決の中で日本の安全保障をどうするかが問われる時に、自民党と対決する野党の中で、何の議論も起こらず、スイスイと政策が決まっていくって、果たしてどうなんだろうか。共産党も野党共闘に独自の立場は持ち込まないと言っているので、「赤旗」ではものはいうのだろうが、野党との協議の場で持ち出すことはない。

 

 共産党がせめて「当面は専守防衛」という立場ならば、専守防衛の中身をめぐって共通のベースで議論できるのに(「先制攻撃は専守防衛ではないだろう」とか)、専守防衛も間違いという立場に立っているため、専守防衛か自衛隊の縮小(将来は廃止)かという対立になって、議論そのものができないという構図になっている。だから独自の立場を持ち込まないと表明し、議論しないことになるのだが。

 

 それは果たして日本にとっていいことなのだろうか。悩んじゃうなあ。