先月末の31日、新聞各紙にいっせいに、来春から使われる高校教科書の検定結果が公表されたという記事が掲載された。これまでにない新しい科目が導入されるのである。

 

 例えば「地理総合」。地理としては50年ぶりに必修科目となる。私が高校生の頃は、好きでも嫌いでも地理は必修だったと記憶しているが、長い間、必修から外れていたんだね。

 

 そして「歴史総合」。近現代史に特化し、日本史と世界史を関連づけて学ぶ科目である。こう書くと理解されやすいと思うが、直接のきっかけとなったのは、受験等の関係で一科目を選ぶとなると日本史ということになっていき、どんどん世界史を学ぶ高校生が減ってきたことに対して、世界史研究者の危機感がふくれあがったことだと聞く。日本史と関連づけて学ぶということで、日本史研究者にとっても文部科学省にとっても受け入れやすかったのだろう。

 

 そして大事なことは、その結果、歴史をどう学ぶべきかについて、新たなというか、本来的なアプローチが可能になる条件が生まれたことだと感じる。それを高校生向けではなく一般向けの教養書として刊行しようというのが、わが「歴史総合研究会」である。

 

 教科書検定の結果が公表された31日、その14回目の研究会が開催された。以前はずっと弊社が会場だったが、この間、ズーム会議になっている。春、夏、冬の年3回の開催なので、15回目の次の夏を過ぎると6年目を迎えることになる。

 

 日本史、東洋史、西洋史の6名の研究者が分野を超えて議論する試みは刺激的だ。それぞれの研究者にとっても、自分の専門外の話が聞けて、議論ができるというのは、大事な体験なのだと思う。だからこんなに何年も続いてきた。

 

 1人が1冊を書き、番外編で1冊を出して、合計7冊の予定。それぞれ著者の専門もあるのだが、私なりに大事だと思うのは、共通のテーマが見いだせることだ。

 

 それぞれの巻では、「文明」「国家」「近代化」「国民」「戦争」「日本」「植民地」とは何かということを、歴史や地域を超えて学ぶ。そんなコンセプトのシリーズになると思われる。刊行されるのは、まだ1年先になるけれど、こんなに時間をかけて刊行する本は私としては初めてなので、力を入れたいと考えている。乞うご期待。