これだけ人口密度の高い国で、そもそも密を避けなければならないコロナ対策がそう簡単ではないことは、当然のこととして予想できる。とりわけ、東京や大阪などの都市部は、人口密度の少ない地方自治体と異なり、かなり苦労の質が違うと思う。だから、「あの自治体にできてなぜ東京、大阪はできないのか」と批判すべきではないと思ってきたし、時に間違ったことを口走ったり(吉村さんのイソジンとか)、政争の道具のように扱ったり(小池さん)することがあっても、大目に見るべきだとさえ思ってきた。

 

 しかし、最近のお二人がとった措置には、首をかしげざるを得ない。コロナ対策の論理が破綻していると感じるのだ。

 

 まずは大阪。政府に蔓延防止措置の発動を求め、飲食店で食事中のマスク着用を義務化するという。そういう措置自体は否定するものではないというか、飲食店の時短要請を一般的に行うのではなく、マスクの着用を含め、「こうすれば感染リスクが低まるので営業が可能だ」というものを示すことは大事だと思う。

 

 しかし、緊急事態宣言の最中でもやらなかっらマスク着用義務化を、宣言が解除されてから行うのはどうなのか。論理が破綻しているとは、このことだ。緊急事態宣言と蔓延防止措置と、誰がどう見ても前者のほうがキツい措置がとれるはずなのに、前者の期間中は発動しないで、終了してから発動するというのでは、国民にいろいろなことをお願いする道理を失ってしまう。

 

 東京都が緊急事態宣言中に時短要請に応じなかった店舗のうちのいくつかに過料を科す手続きを裁判所に通知したのも、それと似たようなものだ。

 

 東京都に言い分があるのは分かる。時短要請に応じなかった店のうち、「時短していない」と公言してきた店に限っていて、「悪質」という認識だろう。

 

 けれども、それにしても、緊急事態宣言は終了したのである。東京都もOKしたのだろう。終了したということは、宣言期間中の措置がそれなりに功を奏して、「もう解除して良い」という判断があったことを示している。

 

 それなのに過料を科す手続きを進めるということは、ホンネでは、このままでは第4波が確実だから、見せしめにしようということなのだろう。ホントなら、緊急事態宣言を継続すべき局面だと思っているのに、政府に押し切られたため、実際にとる措置は緊急事態宣言並にするということだ。

 

 これも大阪と似ていて、緊急事態宣言の重みを打ち消す措置なのである。こんな論理破綻をくり返していると、もはや緊急事態宣言の信頼性は地に落ちてしまう。次に発動しようとしたとき、「あれ、実際の措置は、宣言になったらユルくなるのかなあ」と思わせてしまう。

 

 行政の大失敗である。お先真っ暗とはこのことだ。