中国が海警法を改正して海警の船に武力行使の権限を与えたことが問題になっていたので、先月末、「中国の海警法改正問題の勘所・上」「中国の海警法改正問題の勘所・下」の二つの記事を書いた。こういう場合いつも、「自分が防衛大臣だったらどう対応するだろうか」という自覚を持って考えるようにしている。政権をめざす野党もきっとそう考えているだろうけれど。

 

 そこで書いているように、私の問題意識は、「相手が軍隊なら自衛隊が対応すればよい。しかし、相手が名目は警察で実態は準軍隊という場合、日本はどう対応すべきかという」ということにある。非常に複雑な問題である。海上保安庁では太刀打ちできない武力を相手は持つのだし。

 

 そうしたら最近、旧知の毎日新聞の滝野隆浩記者(防衛大学校卒だ)が、海上自衛隊出身の齋藤隆・元統合幕僚長のインタビューをしていて、それがネットにも流れているのを知った。そんな防衛専門家の見解と比べて失礼だが、ほとんど問題意識を共有する。専門家でないと提唱できないこともあって敬服するところもあった。

 

 是非読んでいただきたいのだが、このインタビューの勘所は、タイトルにあるように、いま述べたような複雑な性格の問題への対処方法として、「海自が海保の統制下で対処」することを提唱したことにある。

 

 海警法の問題は、「管轄領域」という曖昧な概念を用いて、そこでの武器使用を定めたことにあるのだが、中国にとって尖閣は曖昧な領域ではなく、まさに領土である。領土ならば海警法が定めるような武器使用をしても合法だという論理で中国はやってくるだろう。斎藤さんもそこは冷徹に見ていて、「中国側からみれば、尖閣諸島の権益保護は当然ながら、状況によれば防衛作戦も含め一義的に対応するのは海警となる」「武器使用について触れた22条は、たとえば『領海』であれば当然そうなるから、ここを批判するだけでは足りない」としている。

 

 しかし、では相手が事実上の軍隊だからといって、日本側も海上自衛隊で対応するのか。それだと相手に「自衛隊が先に手を出した」という宣伝を許すことになって、世論の戦いで不利になる。斎藤さんも、「仮に海上警備行動(自衛隊法82条に規定)を発令して海上自衛隊が対処するということになると、中国は当然、『日本が最初に軍艦を出してきた』と国際世論に訴えてくるだろう」と同じ考えのようだ。

 

 ではどうするのか。そこで私は、この法律によって、海警局が事実上の軍隊になったことを重視し、それを国際的な認識にすることによって、いざという時に海上自衛隊に頼ることになっても、日本側の対応に世界の理解を得るべきことを述べた。

 

 そこは斎藤さんも同じなのだが、すごいところが、「海自が海保の統制下で対処」するということなのだ。これだと、海警の船なみの実力をもって対処できるが、同時に海自の性格も海保と同じく(海警の建前とも同じく)法執行機関となって釣り合いがとれる。

 

 やはり専門家は違うものだと敬服する。まあ、私のような素人と比較するのがおかしいというか、失礼なのだけれどね。