たしか国旗・国歌法が問題になっていた1999年のことだ。当時、私は共産党の政策委員会で仕事をしていたが、外から批判の電話がかかってくることが多かった。

 

 なぜかと言えば、この法律を制定する一つのきっかけとなったのが、不破委員長(当時)の発言だったからだ。いろいろな行事で国旗と国歌をどうするかは、戦後の日本で大きな対立を招いていたが、不破さんは国旗の掲揚や国家の斉唱が法律上の根拠なくされていることが一番の問題であるとして、「法律によってその根拠を定める措置をとることが最小限必要なことです」と述べていた。それを官房長官だった野中広務氏が注目し、それなら制定しようじゃないかとして、1999年、法制化に至ったのである。

 

 しかし、当時の左翼界隈では、法制化されようがされまいが反対すべきとの論調も強く、不破さんが言い出さなかったらこんな問題にならなかったとの批判があった。それが大量に共産党本部への電話となってあらわれたいたのである。

 

 それは誰でも知っていることだから、これ以上は書かない。私が印象深く覚えているのは、共産党がそうやってみずからの発言で強い批判に直面している事態を前にして、不破さんが、「共産党というのは、右からも左からも批判されるという程度のスタンスがちょうどいいんだ」と言われたことである。

 

 私は不破さんを批判したくて、これを書いているのではない。逆である。共産党はそうでなければならないと、当時すごく共感したし、いまも同じ思いでいるのである。

 

 選挙になると、いろんな争点ごとに、どの政党はどこに位置するというような図解がされることがある。それを見ると、たいていは、共産党はいちばん左のところに位置していて、自民党はいちばん右である。それを誰も不思議に思わないで見ていると思うのだが、それを肯定している限り、共産党が国民の多くから支持されることはない。図解のなかで、左にすべきか右にすべきか真ん中にすべきか、メディアが迷うような立ち位置をとらないと、結局、左側の極端な人に立脚した政党ということになってしまう。

 

 もちろん、そんな中途半端では、右からも左からも嫌われる危険性があるのだけれど、そこを躊躇していては、いつまで経っても数%の支持しか得られない。1999年の不破さんの発言は、なかなか大事だったと思うのである。それ以降(というか正確にはその数年後に自衛隊活用を打ち出して批判が集中して以降だが)、そんなスタンスをとらずに左翼政党というか市民政党になっていったので、その路線を進めばどうなったのかは、なかなか読めないところがあるのだけれど。