自民党と立憲民主党の協議の末、妥協が成立した。まあ、自民党も最初から、このあたりを落とし所だと考えていたのだろうね。ほとんどの党が賛成するものでないと、国民の側から反発が起きてしまって、実効性を欠くことになるからだ。

 

 そして、これも予想通りだが、共産党がこの修正に「反対」の立場をとっている。本日の「赤旗」では、志位委員長が「わが党としては、感染症法と特措法の改定案の両方で、行政罰も含めて罰則は全面的に削除するという立場だ」と表明している。行政罰というから、過料にも反対ということだ。穀田さんも、国対委員長会談で、「過料も含め罰則で国民に強制することには反対だ」と述べたそうだ。

 

 先日、「人権の制限はどんな場合に可能か」という記事を書いた。それは、こんな事態になることが想定されていたからだ。

 

 日本国憲法は、「公共の福祉に反しない限り」において、基本的人権が尊重されることを定めている。そして、感染症という人の命が大量に失われていくという事態は、まさにその「公共の福祉」という見地が求められる事態である。その場合も「全面的に罰則には反対」というのなら、日本国憲法を擁護する立場の政党としては、どんな場合だったら「公共の福祉」にあたるのか(罰則が必要になるのか)を明らかにする必要がある。そうしない限り、人権の絶対保障という見地で何を提案されても反対する立場になって、憲法を擁護する立場ではなくなってしまう

 

 いずれにせよ、実際に採決に付されるのは、罰則を科すという与党と立憲が合意した案である。共産党の言い分が通らないのははっきりしているが、その案に共産党は反対するのか賛成するのか。これは野党共闘の行方を左右する問題になるだろう。

 

 共産党が反対することになっても、すなわち野党で意見が分かれることになっても、まだ野党にいるから深刻な問題にならないかもしれない。しかし、もし選挙で野党が多数になり、政権を担うことになれば、国民がいちばん関心を持ち、不安になっているコロナ問題で、政府が法案を提出できないということになりかねない問題である。

 

 野党共闘が政権共闘に発展するのか、その方向で推進していいのかを占うケースになるから、来週の国会からは目が離せない。