昨日、安倍政権論と野党共闘論で講演をしてきた。コロナ禍もあって久しぶりだから少し緊張したけれど、お話をしながら、「ああ、この日のために努力してきたんだ」と思い至った。

 

 前にも書いたことだけれど、1998年、不破さんによる共産党の政権論についての長いインタビューが「赤旗」に掲載され、私としては非常に納得がいったのである。それまで、安保廃棄の民主連合政府だけが共産党の政権論と思われていた時代が長く続いていたが、それだけではないと強調され、もし共産党が政権に就くことがあるとすると、これしかないと感じた。共産党の説明では、いずれ共産党以外にも安保廃棄でがんばる政党が出て来るという展望だったが、見通しうる期間、それは難しいと思っていた。

 

 一方、そういう暫定政権は、安保問題は留保するという考えで、それは短期間しか通用しないものであった。安保問題で不安定ではどこかで破綻する。しかし、もともと消費税廃止など特定の課題での政権なので、目標を達成すれば解散し、新たな政権の枠組みができるだろうと、漠然と考えたいたのだ。

 

 けれども、不破さんはその後、自衛隊活用へと大きく舵を切ることになる。自衛隊活用が共産党の基本政策だということになれば、政権での不一致点はかなり解消できることになる。これで民主連合政府ではないが、防衛問題でそれなりに一致する政権を展望できることになると考え、防衛政策をどう打ち出すか真剣に考えた時期があった。

 

 ところが、その後、党大会で打ち出した自衛隊活用という方針が、民主連合政府以降の方針であって、それ以前の政府での方針ではないという説明を受けることになった。そして結局、大きな違いが生まれて、退職することになったのである。

 

 あまり意識したことはないが、なぜ退職後、九条の枠内での自衛隊活用という考え方で本をつくったり、自衛隊を活かす会をつくったりしたのは、そのモヤモヤを吹き飛ばしたい気持が奥底にあったのだと思う。

 

 その後、2015年の新安保法制反対闘争をふまえ、共産党が野党連合政権を打ち出し、安保廃棄の政権ではないが自衛隊の活用は認める方針を打ち出したので、ようやく一致点が広がったと感じた。ただ、その時点では私が勘違いしていたのだが、自衛隊を活用するというのは、あくまで野党政権を壊さないための共産党の譲歩であって、侵略されたときに自衛隊を使うということ自体は、共産党の政策としては採用されていないのである。

 

 だから、このままでは、野党連合政権と言っても、侵略された時に自衛隊を使うという点では、政権に入る共産党閣僚はそれを認めるが、共産党自体は認めないということになるわけだ。そんな政権が本当に国民の支持を受けられるのか。

 

 「この防衛政策なら野党政権において、立憲民主党も共産党も賛成している」。そんな政策がないと政権共闘はできないと思う。私がずっと自衛隊問題でがんばっているのは、そこを目標としているからなのだと、昨日、思い至ったということである。