先日の「朝日新聞」に中村喜四郎さんの話題がのっていた。「底流2020」と題したシリーズで、上が「自民流、野党に持ち込む「プリンス」」、下が「自民と互角の野党へ「最後の奉公」」。激しく共感できた。

 

 10月1日に野党4党のトップが集まって食事をしたそうだ。呼びかけたのが中村さん。この「大ベテランは、会合の30分前に店に入り、一番下座に座って4人の到着を待つというこまやかな気配りを見せた」という。ここがなかなかできないことだよね。

 

 そこで志位さんが言ったそうだ。「政権交代をしよう。そうなったら野党連合政権になるのは当然だ」

 

 それに対して中村さんが発言する。以下のように紹介している(記事の引用)の。

 

 「歴史と伝統のある共産党の志位委員長に在野の私が言うことでもないかもしれませんが……」。控えめな口調だが、言葉は鋭い。「今この場はそういうことを話す場じゃない。まず保革伯仲をめざすべきだ」。次期衆院選で政権交代を一気にめざすのではなく、自公勢力と野党が拮抗(きっこう)することを目標にする――中村氏の持論だった。

 

 その後、二人の間でやり取りが続いたとされる。その議論の中身は書かれていないが、枝野さんが「保革伯仲というより与野党伯仲というのがいいかもしれませんね」と引き取り、議論は終わったという。

 

 共産党は現在、次の総選挙に野党共闘で臨み、現在の野党で多数を占めて政権を奪取することを公言している。そして、すべての活動をその観点で組み立てているので、どんな場でもこの立場で運動することになる。志位さんに限らず、現場でも、政権交代を訴えて「そのために共産党に入ろう、「赤旗」を購読しよう」と訴えるわけだ。

 

 ただし、大臣経験もあり、政治のことを知り尽くしている中村さんの目で見ても、そこまでは難しいという判断がある。ましてや、民主党政権のていたらくを実体験し、さらに安保・自衛隊問題を中心に基本政策がまったく異なる野党の共闘に不安を感じる国民が、一年後に野党で政権をと訴えられて、「そうだ、そうだ」とはなかなかならないだろう。

 

 それよりも、政権をとれる野党になるためにも、もっと経験を積ませてほしいという訴えのほうが、より心に響くのではないかという気がする。次の選挙で与野党伯仲の状況がつくれれば、政権が目の前に来るのだから、安保・自衛隊問題での溝をどう埋めるのかについても、真摯な対応が求められる。志位さんも、自分が防衛大臣になったとして、目の前にいる自衛官にどう向かうのかを真剣に考えることになるだろう。

 

 そういう立場で訴えたほうが、心への響き方が深まるので、「政権をとりにいくぞ」と言うよりも、選挙での支持も広がるような気がするのである。どうだろうか。