以前にも紹介しましたが、ようやく校了です。23日に倉庫に納品され、出荷されていくことになります。画像は著者が普及のために作成した独自チラシです。著者がこうやって意欲的に自分で普及しようとする本はよく売れます(というか著者が普及したいと思うなら自分で努力するはずなんです)。チラシに和歌山大学の江利川春雄先生の推薦文が乗っていたので、研究室のブログを見に行ったら、もっと長い紹介文の一部でした。全文を以下、紹介します。

 アマゾンでも弊社サイトでも予約が開始されています。

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 中村敬先生という「日本英語教育史に記録されるべき傑物」を、このような形で現代および後世に残された意義は計り知れないと思います。

 

 私自身、院生時代に読んで衝撃を受けた『私説英語教育論』(研究社、1980)や『英語はどんな言語か:英語の社会的特性』(三省堂、1989)から、教員として大学院のテキストに指定した『「英語教育神話」の解体:今なぜこの教科書か』(三元社、2014)に至まで、中村敬先生ご自身と著書・論考から絶大な影響を受け、個人的にもたいへんお世話になりました。

 

 このたびの『英語教育のために:中村敬を継ぐ』から1箇所だけ引用します。

 

 「このような歴史的経緯の中での英語教育のあるべき姿を追究したのがぼくの一生でした。それは葛藤の一生でもありました。

 葛藤は、英語を深く学び、教え、研究することが、文化の深層に触れることのプラスの側面と、富国強兵という国家の理念を補完することになるのではないかという負の側面との間に生ずる葛藤です。その負の理念は自由であるべき教育や学問の自律性に反する。その葛藤を克服するために、あるいは特定国の言語であることから生ずる英語帝国主義状況を克服する理論として、ぼくは「対抗理論」と「空洞化理論」を提出し、それを実践することで闘ってきました。闘いはまだ終わっていません。」

 

 英語教育関係者の多くが体制化し、英語教育の「負の側面」を忘れ、批判精神と社会的政治的視野を欠いて、目的論なき些末スキル主義に走るなかで、中村先生の発し続けてこられた警鐘をどう継承するかが、文字通り問われていると思います。

 

 三省堂のNEW CROWNを中村先生と共に担われた若林俊輔先生も今は亡く、私の恩師である青木庸效先生も昨年逝去されました。

 

 一人孤塁を守る中村先生には、どうか益々お元気でご活躍をお願いしたいと思います。

 

 「闘いはまだ終わっていません」

 

 もとより「中村敬を継ぐ」べきは私たちであり、さらに次世代に継いでいかねばならないと自覚しております。

 

 あまりにも荒涼とした砂漠のような日本の英語教育界に身を置くことは、正直、苦痛そのものです。

 

 さりとて、このままでは子どもたちを苦しめるための「英語教育」に成り果てますので、『英語教育のために:中村敬を継ぐ』から元気をもらい、取り組みを続けましょう。

 

 本書を心から勧めます。