『安倍政権は「倒れた」が「倒した」のではない—野党共闘の可能性を探る』が納品されてきて、最初にやるのは関係方面への発送です。取り上げてくれそうなメディアとか個人とかに目星をつけて送るのです。
ということで昨日は出社したのですが、その作業をしていると、同僚が言うのです。「誰よりもまず安倍さんに送ったら」と。
「そうだねえ。そう言えば、左翼の本ででこんなに安倍さんのことを褒めている本はないものね」と答えて、最初に安部さんのお名前と議員会館の住所を書きました。土日挟むので届くのは週明けでしょうけれど。
安倍さんを褒めていると言ったら怒られるかもしれませんね。でも、小泉さんが退陣して以降のこの十数年、自民党であれ民主党であれ、どの首相も1年しかもたないなかで、安倍さんだけが7年8か月ももったというのは、それなりに根拠があることだと思います。
ヘーゲルも、そんなこと言っていますよね。存在するものには根拠があるんだって。そこにとどまれば現状を肯定する保守になるんですが、そこを見極めないと変革の道筋も分からないということで、ヘーゲルに依拠しつつ、マルクスらの学説が生まれてくるわけです。
自衛隊を活かす会の講演会で柳澤協二さんが話すと、参加者から安倍さんに関する質問がわりと出ます。柳澤さんが内閣官房にいて、安倍さんの近くで仕事しているから、よく知っていると思うからでしょう。とくによく出るのが、安倍さんの能力が低いという材料を求めるような質問でした。
それに対して、柳澤さんがいつも答えていたのは、政権を長くもたせるのはバカではできないということでした。本人の能力もあるし、側近を最大限に活用する能力も含めて、なにがしかの能力がないと、とても日本の憲政史上で最長の政権が続いた理由は説明できません。
それともう一つ柳澤さんが強調していたのは、安倍さんが第二次政権では命をかけてやっているということでした。政権を担ってやりたいことがあって、そのやりたいことのためには、自分の命が削られてもいいんだという執念を感じるということで、自分ではまねできないとおっしゃっていました。
私もそう思うんですよね。だから、今度の本でも、一年で辞めていった他の首相と安倍さんはどこが違ったのかという角度で、それなりに分析したつもりです。
そこが分からないと、同じ手法でやろうとしている菅さんにも対抗することができない。野党共闘もうまくいかないと思うんですね。
安倍さん、この本、呼んでくれないかな。反応してくれればうれしいな。明日から東京です。