いま花岡事件をテーマにした本をつくろうとしている。終戦の一か月前、過酷な労働に耐えかねた中国人労働者が決起したが鎮圧され、何百名もが虐殺された事件である。

 

 その事件全般を取り上げた本ではない。事件が起きた花岡のある大館市が、何十年もの間、ずっと市主催の慰霊祭をやっていて、なぜそんなことが可能になったのか、その真相にたどり着きたいということがテーマである。

 

 だって、連行された中国人、朝鮮人を死に追い込んだ事例は全国に散らばっているが、慰霊祭を行政がやっているところは、他にはない。関東大震災で虐殺された朝鮮人を慰霊する民間の行事では、石原知事の時でもメッセージを寄せていたのに、小池さんになってなくなるなど、むしろこの分野では交代が見られる。

 

 ところが、大館市では、革新市政の時も保守市政の時も、かわらず慰霊祭を続けてきた。なぜそんなことが可能になったのか、知りたいのは私だけではないだろう。

 

 これが分かれば、戦争の加害に対して、保守も革新もなく政治的立場を超えて向き合う手段が見いだせるのではないか。それを期待しているのだ。革新は向き合うが保守は向き合わないというのでは、革新がいまのように凋落を続ける限り、未来が見えてこない。

 

 ということで、一昨日、つい最近まで24年もの間、市長をしておられた小畑元さんを東京事務所にお迎えし、池田香代子さんにインタビューしてもらったのだ。池田さんもこの20年近く、慰霊祭に通い続けている(自費で)。

 

 いやあ、勉強になったなあ。そうか、保守の心って、そういうところがあるんだと得心した。

 

 心の話、気持の話だから、どう活字にしたら読者に伝わるのか、とても難しい。編集者としての腕が試されるなあと思いながら伺っていた。

 

 是非、活字になったものを見てほしい。大館の話ではなく、日本そのものの課題だから。

 

 10月末、大館に池田さんと飛んで、革新の立場からかかわってこられた方の話を伺う。それと事件そのものについて、記念館の館長さんにインタビューする。

 

 やるべき仕事が山積み。がんばらなくちゃ。写真は、6月に慰霊祭に参加した際に撮影したものです。