27日(木)に7名ほどで見学してきました。新聞記事やネットでの反応を見ていたので、もちろん予想はしていました。しかし、予想をはるかに超えたもので、それは悪い意味でもいい意味でもそうだったので、何を書けばいいのか、本日まで悩みながら伸ばしてしまいました。

 

 私は自分の関心に惹きつけて徴用工展示室と言いますが、産業遺産情報センターが正式名称です。新宿区の、しかも駅(若松河田駅)から徒歩4分の便利なところにあり(総務省の統計局の一角に間借りしたかたちです)、アクセスは容易です。

 

 だから、多くの人に見てもらいたいのかなと思っていたら、入り口(門)に断っても、「統計局」の看板はあっても、情報センターを表示するものは何もありません。それを見てフラッと入ってくる人がいないようにしたいのかなあ。案内してくれた方も、「せっかくだから一般の人が来やすい土日に案内したいのに、政府の建物だからということで、平日の午後5時で閉まってしまう」と嘆いていました。何千万円もかけて何を見せたいのだろうというのが、まず率直な感想です。

 

 ここは大きく言えば三つのゾーンに分かれています。最初は導入ゾーン。全体の概略を展示しています。第二がメインで、造船や製鉄など各分野で日本の産業が発達したことを誇るスペース。そして最後が資料室なのですが、徴用工問題はここがメインです。

 

 さて、そもそもこの展示室、最初から予定されていたわけではありません。ご存じのように、韓国が世界遺産の登録に反対したわけですよね。朝鮮人が強制連行された施設が含まれていると主張して。それに対して日本政府は当初、「明治期の産業革命遺産」であって、朝鮮人が連れてこられた戦中期のことを持ち出されても困ると対応したのですが、他の国々の理解を得られなかった。そこで、2015年のユネスコの会議で、政府が以下の発言をしたことによって登録が認められたのです。

 

 「1940年代にいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいたこと、また第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる」「インフォメーションセンターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む」

 

 この政府の発言を具体化するためにできたのがこの施設です。さすがにこの発言内容は、展示室の各所に掲げられていました。当たり前ですけれど。入り口から入った最初のところにもありました。

 

 一方、案内の方は、冒頭、「ここではエビデンスのあるものしか展示していない」と断りを入れるのです。「ああ、これは、韓国側の言い分はエビデンスではないので展示していない」ことを言いたいのだなと感じたので、確認したのです。

 

 「そこにユネスコの会議での政府の発言が書いていますが、朝鮮半島出身者が「意思に反して連れて来られ」たとか「厳しい環境の下で働かされた」とか言うのは、政府がエビデンスをもって発言したことですよね。それともエビデンスなしに発言したのですか?」と聞きました。

 

 説明員は、ちょっと戸惑った顔をして、もう一人の方と目を合わせてうなずき合い、「これはエビデンスにもとづくものです」と言われました。そうですよね、エビデンスでなければ、日本政府は登録のためにウソをついたことになるのですから。(続)