NHK広島放送局のツイッターが削除に追い込まれた問題。この問題ではNHKらしいというかメディアらしい踏み込んだ対応をお願いしたい。


  問題となったのは、被爆した直後の朝鮮人の少年のつぶやきとして流されたもの。次のようなものだったとされる。


  「朝鮮人だ!! 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!」「朝鮮人の奴(やつ)らは『この戦争はすぐに終わるヨ』『日本は負けるヨ』と平気で言い放つ。相手が朝鮮人では返す言葉が見つからない」


  NHKの謝罪文で書かれているように、これは実際の被爆者の手記やインタビューをもとにしたものだ。当時、このように感じていた人はいたと思う。


  長崎の原爆資料館に行くと、捕虜収容所に入れられていて被爆したオーストラリア人の証言ビデオがあるが、原爆が投下されたことを喜ぶ内容のものだ。それで戦争が終わると確信できたのだから、そういう気持ちになるだろう。


  ましてや朝鮮人である。これで戦争が終わり、日本の朝鮮半島に対する支配も終わると希望が持てただろう。


  当時の広島には七万人くらいの朝鮮人がいたそうだから、周りの日本人も、その気分がよくわかっていたはずだ。これは差別感情という言葉で表現しきれるものではない。


  ただ、謝罪文が言うように、現代の日本で何の説明もなしに通用するものではない。NHKには踏み込んだ対応をしてほしい。


  何をかというと、朝鮮人を主人公にした「この世界の片隅に」を制作してほしいということだ。広島には朝鮮人被爆者もたくさんいたのだから、素材には事欠かないはずだ。


 被爆して家族を失う気持ちと、日本の敗北を喜ぶ気持ちと、その両方を統一的に描けたとき、日本の戦争をようやく本質的に描くものができると思う。NHKならできるだろう。というか、この問題を反省するなら、そこまでしなければならないと感じる。