この問題で一番大切なのは、中国の人々が独裁体制に対する拒否感を強め、レジームチェンジへの志向を強めることである、それ抜きに根本的な解決策はない。

 

 この間、中国が豊かになり、世界との関与が深まれば、中国の人々がそういう思いになるだろうという期待があったけれど、それは叶わなかった。いや、ずっと将来にはそうなるだろうけれど、現在は、独裁体制で豊かになったという実感が中国の人々を覆い尽くしている。

 

 そこで、いまアメリカがやろうとしているのは、現在の体制のままでは中国の経済が不利になることを実感させることである。HUAWEIの5G排除で追い詰めようとしているわけである。

 

 これは、アメリカならやり抜くことはできる。HUAWEIには安全保障問題があると言えば、多少、アメリカが経済的に損をするようなことがあっても、国民多数もついてくる。それに世界が従えば、中国国民も独裁体制では豊かになれないと実感する可能性がある。

 

 ただ、問題は、世界がそれに付いてこられるかだ。だって、HUAWEIの安全保障問題って、アメリカにとっては自明のことでも、世界ではそうではない。中国にネットワークの中核を握られることが安全保障に影響があると一般的にわかっても、証拠を持って具体的に証明されないと、関係を断つことは簡単ではない。だって、HUAWEIの製品は安いのだから、資本主義国の原理原則としてそれに飛びつかざるを得ない。そうでないと資本主義国ではない。

 

 現在、求められているのは、中国がどんな世界をつくろうとしているかについて、証拠をもって示し、共通の理解を養うことではないか。そんな世界にはしたくないと多くの諸国民が思うようになれば、多少の不利益はあっても中国に頼る経済政策はとらないようになる可能性がある。

 

 例えば領土問題ではほぼ共通の理解は得られるはずだ。南シナ海問題で中国が主張している九段線というのは、現在の国連海洋法条約とは完全に相容れないものである。このまま中国の影響力が増大していけば、それが南シナ海にとどまらない問題になってくる。

 

 ただし、領土問題は、そうはいっても中国と国境や海洋を接している国だけの問題であり、ヨーロッパは身近な問題にはならない。だから、貿易や金融その他あらゆる問題について、中国が何を主張し、何を目指していて、それが世界に何をもたらすかについて、実証されたものを提起していく必要があると感じる。(続)