アメリカが中国の領事館に対して閉鎖を命令し、中国も報復措置をとるなど、米中関係はいっそう深刻化している。この流れは止まりそうにない。

 

 それに関するこの数日間の報道を見て特徴的だと思ったのは、アメリカ側が中国という国家を批判するだけでなく、「中国共産党」という名称を持ち出して批判していることだ。ポンペオ国務長官も国務省の報道官も同じだった。

 

 これは、明らかに大統領選挙対策である。アメリカ国民に嫌われている「共産主義」と闘っているのだと示すことで、トランプの支持率を何とか回復したいのだろう。中国外務省の報道官が領事館閉鎖を選挙のカードにするなと述べていたのは、その限りでは正しい。

 

 ただ、これが選挙のカードとしてうまく機能せず、バイデンが大統領になったところで、米中関係の基本的な構図は変わらない。先日発表された民主党の選挙公約原案を見ても、そのことはうかがえる。トランプがあまり関心のない人権問題では民主党のほうがずっときつい立場をとることになるだろう。

 

 「共産主義」を前面に押し出した中国との対決に対して、どう対抗していくのか。これが大きな課題となっている。この問題で、争いを主導しているのがアメリカだとして、中国よりもアメリカを批判することになると、国民世論からは浮いてしまう。ケンカ両成敗の立場でもほとんど同じである。そうなったら、日本におけるコミュニズムは壊滅的な打撃を受けるし、中国の野望を阻止することもできない。

 

 別に中国のほうをより強く批判すべきだと言っているわけではない。そうではなくて、アメリカの中国に対する批判よりも、日本から発せられる批判のほうがずっと説得的で、これなら本当に中国を変えられるかもしれないと思わせるような、そんな批判を日本の政治勢力は編み出さなければいけないということだ。

 

 これはヨーロッパ諸国からは出てこないだろう。アメリカと中国の軍事的対決のもたらすものが、日本の場合はヨーロッパと比べものにならないほどの大きさだから、日本人こそが真剣に考えられるし、世界にも提示できると思うのだ。

 

 まあ、そんな立派なものを私が提示できるとは思わないが、少し考えながら書いていこうと考えている。毎日の連載にはならないだろうけれど。(続)