『「異論の共存」戦略 実践記』は、ようやく細かい修正も終わり、出版社に検討してもらっているところ。そちらはもう大きな作業は不要なので、次作に取りかかった。

 

 タイトルをつけるとすると、『奥深く知る日米地位協定』かな。サブタイトルは、「オモテもウラも逐条解説」。

 

 そう言えば、最初に出した本も地位協定に関する本だった。『日米地位協定逐条批判』という。1994年の沖縄少女暴行事件のあと、弁護士や学者らといっしょに「地位協定研究会」を立ち上げ、議論を重ねて『前衛』という雑誌に連載し、その後(1997年)、本としてまとめた。453頁もある本で、いまではかなり知られているが、駐留米軍にドイツの国家主権を適用した「補足協定」の全訳が100頁程度も載っている。

 

 それから23年が経っている。当時、少女暴行事件で問題になった日米地位協定は改定しなければならないし、変わるものだとも思っていた。23年、何も変わらないなんて、思いもしなかった。

 

 ここ数年、地位協定に関する重要な本がいくつも出ている。そこに再び参入して、何らかのものをつけ加えられるだろうかと考えたのだが、23年前を思い出し、現時点の到達をふまえ、逐条的に書いてみようと思った。そういう本、この23年間、出ていないし。

 

 地位協定を論じると、あまりの不平等性があるので、著者にはそこへの怒りが吹き出すことがままある。それはその著作を生き生きとしたものにするのだが、同時に、地位協定は全28条あって、その全体を掴まないと、すべてを理解したことにならない。

 

 書き方としていま考えているのは、まず、地位協定の条項を引用する。そのあとに、地位協定の前身で、アメリカの占領下でつくられた行政協定の対応する条項を置く。

 

 それだけではない。さらにそのあとに、行政協定を地位協定に変えるにあたり、日本政府がまとめた改正要求をもってこようと思っている。今年1月、沖縄タイムスが公表したものである(というか民主党政権下で公開された秘密文書の中に含まれていたのだけれど)。占領が終わり、主権国家としてアメリカとの間で地位協定を決めるるわけだから、これでようやく対等になれるという行政官の意気込みみたいなものが伝わってくるのである。

 

 その3つを並べることで、主権国家としての立場は実質的に貫かれたのか、形式だけに終わって実質は占領期と同じだったのか、あるいは対象は主権国家らしい条項になったのか、いろいろ考えることができるようになると思う。年内刊行予定。