黒人差別に対するアメリカの人々の運動はすごいなと思う。それに連帯する運動が各国で広がっているのも頼もしいことだ。

 

 これに対してトランプさんが「法と秩序」を求めていることについて、香港の問題では中国の強圧的な態度を批判しておきながら、ダブルスタンダードだという批判がある。あるいは、民主化を求める香港の人々の中に、トランプのアメリカに期待する声もある。アメリカに期待する以外、中国の強権に対抗する手段が見つからないという現状の反映であるけれど。

 

 しかし、この問題を、少なくともトランプ政権に頼ることがあってはならないと考える。トランプはダブルスタンダードというより、その本音は「法と秩序」の側にあるからだ。

 

 本日の朝日新聞を見ると、天安門事件についても、トランプは中国が「力で抑え込んだ」ことを評価している。それをアメリカの黒人差別問題での運動を鎮圧するに際して、見習おうともしているようだ。

 

 「トランプ氏は以前から、「強さ」にこだわってきた。ビジネスマンだった1990年には、雑誌インタビューで天安門事件の際の中国の対応について「残酷だったが、力で抑え込んだ。我々の国は弱いとみられている」と発言。1日の演説前には州知事との電話会談でデモへの対応を「弱腰だ」と批判し、「圧倒しなければ時間の無駄だ」と語った。電話会談ではエスパー氏も、デモの現場を「戦場」と表現した。」

 

 香港問題で中国を批判しているのは、ただの選挙目当てということだろう。

 

 中国が香港の自治も破壊し、台湾吸収への野望を隠さないのは、国際法上の「1つの中国」という原則にある。これは、列強が中国をさんざん痛めつけてきた結果として生まれたものであって、どの国も公然と異議を唱えることができない。これに挑戦しようとすればするほど、中国はさらなる強権で向かってくることになる。

 

 しかし、やはりここに踏み込まないと、香港の自治を確固としたものにすることもできない。どこに打開策はあるのだろうか。

 

 私が考えるのは、法的には間違いなく1つの国であったものの中から、別の国があらわれるという実例が出てくる以外にないということだ。スコットランドがイギリスから独立したり、ケベックがカナダから独立したりという実例が出てくれば、そしてそれをイギリスやカナダが容認するならば、「1つの中国」にも例外があるよねということになる。

 

 そう、だからやはり、トランプに頼ることではないということだ。人々の運動をどう高めるのかということだ。一国二制度が終わるあと20数年の間に、どこまでそれを進められるのか、世界の人々が問われている。