近く刊行する『中国は社会主義か』ですが、実は、日中友好協会京都左京支部の集まりに参加したことがきっかけで作成できることになりました。そこに機関紙に寄稿したものを紹介します。

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 出版社に勤めるものとして、ずっと昔から、このタイトルで本をつくりたいと思っていました。だって、これだけ意見が割れていて、それぞれの人は講演会や著作で自説を披露しているのに、何がどう違うのか、なぜ違うのか、あるいはどこまでなら一致するのかなど、議論が足りないように感じていたからです。

 

 そんな問題は他にもあって、すべての論争問題で意見の異なる人を集めて議論し、本にすることをしていたら、編集者としては身体が持たないでしょう。けれども、中国のこの問題だけは、どうしてもやっておかねばならないと感じていたのです。

 

 いちばん大きな理由は、この問題が、日本でどんな社会をめざすのかに密接に関わっているからです。日中友好運動関係者のうち少なくない人は、社会主義というものにシンパシーを抱いてきました(そうでない人もいるでしょうが)。社会的に遅れたところで革命を成功させた中国の社会を、この日本と比較して論じるのは間違いにしても、ある国を社会主義(それをめざす国でもいいです)と規定することは、日本でめざそうとする社会像と無縁ではありません。政治体制に同意せずとも、経済体制には参考にすべきことがあるのかどうかなど、議論しておくべきことが山ほどあるのです。五人の著者のみなさんは、メールのやり取りも含め何か月も議論し、昨年一二月のシンポジウムでも議論し、その到達をふまえ、新たに書き下ろしてくださいました。議論したことで認識が変化したことなど、いくつもあると思います。

 

 自分がこの日本をどうしたいかということに関係しているわけですから、議論を他人任せにしていてはいけません。この本の著者任せでもいけません。何かの結論を学ぶということではなく、一人ひとりが議論し、結論を出していくことが大切だと思います。そういう議論の出発点として、この本がお役に立つとうれしいです。

 

 この本が出版できたのは、実は左京支部のおかげです。いろんな著者や団体に何年も働きかけていたのに賛同が得られず、少し腐っていたのです。そうしたら、昨年刊行した『奥深く知る中国』の出版記念会の際(聖護院御殿荘)、少し酔った状態で「こんな本がつくりたい」と私が叫んだところ、今回の本の著者となった方々に賛同していただき、一気呵成に突きすすむことになりました。左京支部には本当に感謝しています。