もう一か月以上前(3月26日)の「時事通信」の配信。共産党が野党連合政権ができたとき、意見の異なる安保、自衛隊問題をどう考えるかを各党に説明しにいった記事である。「安保維持、自衛隊は合憲 「連合政権」視野、立憲に説明―共産」という見出しで、以下のような内容だった。

 

 「共産党の小池晃書記局長は26日、立憲民主党の福山哲郎幹事長と参院議員会館で会談した。小池氏は、共産が目指す『野党連合政権』が実現した場合は独自政策の主張を抑え、日米安全保障条約を維持し、自衛隊は合憲との立場を取ると説明。福山氏は『党内で共有する』と応じた。

 

 共産党の志位和夫委員長も野党共同会派の野田佳彦前首相にこうした方針を説明。自衛官を父に持つ野田氏が『自衛隊を肯定的に認めてほしい』と求めると、『隊員の皆さまが災害のために汗を流していることはリスペクトの気持ちを持っている』と語った。」

 

 新しいことといえば、志位さんが、災害救援に限ってとはいえ、自衛隊員への「リスペクト」を語ったことだろう。自衛隊のことを嫌悪している志位さんが、ここまで言ったというのは、確かにニュースに値するかもしれない。

 

 ただ、これでは政権入りは無理だなとも思う。だって、別の角度で捉えると、本務である日本防衛のために汗を流す自衛隊員はリスペクトしていないと言っているようなものだから。少なくとも野田さんは、そういう感想を持ったのではなかろうか。志位さんは防衛大臣になったとして、自衛隊員を前に災害救援だけはリスペクトすると挨拶でもするのだろうか。

 

 政権をともにするほどの強い関係って、そう簡単ではないと思う。異なる政党なのだから、いろいろな問題で政策、意見の違いがあって当然だ。でも、気持が通い合うところがないと、政権が直面するいろんな困難に対して、ともに立ち向かうのは簡単ではない。他の野党の閣僚が、共産党の閣僚と一緒に仕事をすることになったとして、共産党の閣僚は本音では自衛隊のことを嫌っているのだと思いながら、気持ちよく仕事はできないだろう。

 

 自衛隊が憲法違反かどうかというのは、あくまで憲法解釈の問題だ。日々の訓練に汗を流す自衛隊員をリスペクトするかどうかは、気持の問題だから、憲法解釈とは本質的に別の問題である。違憲だけれどリスペクトするという立場はあってもいいと思うんだけれどね。