「最後の出張」という感じかなあ。京都駅新幹線ホームは、遠くに駅員が一人見えるだけ。私も安全最優先で往復ともグリーン車(といっても10回乗ると1回おまけでというEXICカードの特典だから無料だけど)。沖縄出張はZOOMで代行することにしたし、ずっと出張予定がないなんで、この仕事に入ってから初めてだ。出版業界もどうなっていくのだろうか。

 

 「コロナ後の社会」で説得力ある提示ができない出版社は生き残っていけないだろうね。それ以前に、書店の閉店が数カ月続くだけで倒産するところも出てくるはずだ。弊社のように著者講演会などに頼っているところはよけいにね。

 

 まあ、だから、このテーマに関連するものには関心が向かう。昨日は、「日本に迫る医療崩壊」を特集した「Newsweekの最新版(4.28付)を呼んだ。11人ほどの識者が「コロナ後の社会」を論じていたからだが、それはお粗末だった。わずかに、「市場原理が生んだ人工呼吸器の欠乏」(著者はマンチェスター大学グローバル開発研究所シャメル・アズメ)という別の論考が興味深かった。

 

 アメリカでは人工呼吸器の不足が問題になっているが、実は現在のような人工呼吸器が出来たとき、もっと「シンプルで、手頃な価格で、使いやすいモデル」の開発が必要だという声があったという。今回のような事態が起きたとき、足らなくなることが予測されたから。

 

 それで、アメリカの保険福祉省内に、そのための研究開発局が設置されたという。実際、ある企業と提携し、2011年に試作品が披露もされた。

 

 ところが、翌年、あっさりと開発は停止された。なぜか。以下、引用。

 

 「しかし12年に、この企業は大規模な業界再編の一環として、『従来の』人口呼吸器を製造する大手医療機器メーカーに買収された。試作品まで進んでいたプロジェクトは、間もなく打ち切られた」

 「人工呼吸器技術が世界の大多数の人の手に届かなくなったことは、技術革新の結果ではなく、経済的なインセンティブによるものだ。市場の需要が技術開発を主導してきたため、企業はより高価で複雑な装置を作り、知的財産の仕組みで自分たちの技術を守って、それなりのカネを払える客に売るようになった」

 「市場の力を頼りに技術革新の資源を配分した結果、高価で、可動性が低く、独占所有権を伴う高度な技術を用いて、操作が難しい人工呼吸器しか製造されなくなった」

 

 市場に任せてはならない分野として「医療」が挙げられるし、実際、いろんな努力もされていると思う。ただ、現在のように、医薬品や医療機器が独占によって研究、開発、販売されている現状で、どうやって命を優先させられる仕組みがつくられるのか。考えるべきことは多い。