先日、「中国は「終息宣言」すること自体が問題」という記事を書いた。共産党の民主集中制という組織原則が、そのまま国家にまで適用されている中国のような国では、「終息宣言」などしたら、上から下まで「終息」したことを声高に叫ぶことが党への忠誠として求められ、それに反して終息していない事実とか、再び感染者が広がるような事実を明らかにすると、党中央の処分を受けるため、みんながそれを隠そうとし、結局、大きな災厄を生み出すことを指摘したものだった。

 

 中国のエラい先生も「疫病との戦いから見る統治システムの現代化」という論文を発表し、同じことを思っているらしい。共同通信が、以下、配信している。

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 北京大の姚洋国家発展研究院院長は20日までに、中国で新型コロナウイルス感染症への対応に関し、中央集権の強権統治の下、圧力を感じた地方の当局者が「新規感染を1例も出してはならない」と萎縮していると批判する論文を発表した。同研究院は権威あるシンクタンクで、体制内の専門家からこうした指摘が出るのは異例。

 姚氏は経済の専門家で、公表は15日付。感染が最初に拡大した湖北省では18~19日に新たな感染者が確認されず、他の地域では最近、渡航者以外の感染が1例もない日も多い。政府系メディアが「ゼロ」を宣伝する中、会員制交流サイト(SNS)では地方政府が感染発生を隠すのではないかとの懸念も出ている。

 習近平指導部は企業活動の正常化を急ぐよう要求。だが姚氏は「ミスを許容しない」中央の姿勢を受け、新規感染が出た際の処罰や失職を恐れて、地方当局者が経済復興に取り組めないと指摘。地方行政に自主性と実権を与えるよう訴えた。(共同)

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 中国は、終息宣言をふまえ、経済活動の再開をめざしているが、なかなか思うようにいかないらしい。なぜなら、この論文で指摘されているところによると、一例でも感染者が出ると処分されるので、怖くて思い切った経済対策などできないからだという。さもありなん、とはこのことだ。

 

 中国は体質を改めないと、得意の経済でもうまくいかなくなる。それが今回の危機を通じてうきぼりになったように思える。

 

 民主集中制って、ただ民間の政党が採用する分には、何も問題ない。党員がそれを認めて参加するわけだし、国民は上が言ったら下まで従う実態を見て、支持するか支持しないか決められるわけだから。

 

 でも、その原則が国家システムに押し付けられると、たいへんな厄災が生まれる。どうしたらいいんだろうね。選挙と投票の自由が維持されていると、すぐに政権の座から追われるということで、問題はないんだろうけれど。