前回の安倍首相の新型コロナ問題での会見は、中継を見ないまま、ニュース映像の部分だけで論評したため、今度は全部を見ようと思っていた。それで昨夕はちゃんと見たんだけど、ムダな時間を過ごしてしまったとしか言いようがない。すでに誰もが知っていて、厚労省のホームページに載せるような実務的な情報を述べただけだった。

 

 こんな中身のない会見のために、テレビ局がいっせいに中継をして、多くのメディアの優秀な記者やカメラマンが集まるなんて、どんな意味があったんだろう。現場で必死に走り回っている関係者も、「きっと何か大事なアナウンスがあるだろう」と思って見ていただろうけど、こんなことに時間を費やさず、コロナ対策をしていたかったと思わせたのではなかろうか。

 

 読んでいるだけということが誰にも分かるので、伝わらない。こんな事態では、自分の頭で考えて、自分の言葉で語りかけているのでないとね。用意した文書を読めば誰にでも記者会見ができるようなことでは、指導者としての資格が問われる。

 

 それでも、記者の質問時間が長かった分、意味がなくはなかった。北海道新聞の記者だと思うが、北海道では知事が法律に基づかない週末の外出自粛要請を3週連続でしていて、非常事態宣言をすれば法律に基づく行為になるのに、なぜそうしないのかを問うていた。それに対して、安倍さん、何も語らなかったので、「ああ、やはり自分の頭で考えていないんだなあ」と分かってしまった。「いまは非常事態宣言を出す時ではない」ということを決めたのだから、北海道もそういう時ではないという理屈ぐらい、すぐに言わなければならなかったのにね。頭の中にあるのは結論だけなので、応用ができない。

 

 ところで、非常事態宣言ができるようになったことで、かえってタイムリーな対策が打ち出せなくなる可能性があると思えてきた。この間のコロナの動きを見ていると、特措法が規定するような非常事態になったときには、武漢みたいになって手の打ちようがない。中国がやったように、一人ひとりの行動を監視し、閉じ込めるような、特措法よりもっと強権的な措置が必要となる。

 

 だから、そういう危険性が科学的に見えたときに、国民にお願いして何らかの措置が必要となる場合があるだろう。そういうときって、国民がまだ危険を実感できないときで、強権ではなく、言葉による説得で措置を進めていかねばならない。その能力が安倍さんには欠けていると分かって、ちょっと怖くなってきた。