昨日、大阪の高槻市の2.11で講演してきた。思いの外、参加者が多く、用意したレジメ、資料の50部では足りなかった。申し訳ありませんでした。

 

 この間、日韓関係の問題で毎月どこかでお話をしていて、似たようなことをお話ししたわけだが、昨日、お配りした資料を休憩時間によく読んでくれた人がいた。一昨年12月の韓国大法院判決であるが、以下のような質問であった。

 

 「読んでみて、何かおかしい。請求権協定にもとづく未払い賃金などはすでに支払われていて、原告はそういうものを求めているのではない。日本による違法な植民地支配と結びついた労働の慰謝料を払えとなっているけれども、そうならば支払を求める対象は日本政府になるのではないか」

 

 まったくその通りである。この裁判、まず原告が日本において日本企業に対して、「請求権協定は結ばれたが個人の請求権は残っている」として裁判を開始し、一審、二審、最高裁と敗訴した。それで訴えの場を韓国に移し、一審、二審と敗訴した。それで大法院に持ち込まれて、二審に差し戻され、一昨年12月の大法院判決となったわけだ。

 

 この裁判では最初から、被告は日本企業だった。「請求権協定は結ばれたが個人の請求権は残っている」という論理で闘ったが、それで敗訴した。大法院に持ち込まれた際、判事が考えたのは、その論理では原告勝訴にはならないということだったのだろう。

 

 だから、それまでの裁判では争点にもなっていなかったけれど、日本の植民地支配が違法だったという新しい要素を中心点にして、判決を下したわけだ。それならたしかに訴える相手は日本政府になるのだが、いまさら被告を変更することもできずに、日本政府に責任があることなのに、慰謝料は日本企業に求めるという判決になったわけである。

 

 法律論的には無理がある。日本政府が勝てると思っているのには理由がある。だけど、そこをどう政治的に打開していくのかが、日韓政府の知恵の出しどころだ。そこで、韓国政府には知恵が浮かばないし、日本政府には知恵を出す気持もないというのが現状であろう。

 

 私の『日韓が和解する日』は、その知恵を自分なりに絞り出したものである。文在寅さんと安倍晋三さんに読んで頂きたいわけは、そこにある。