ちょっと主題からズレていくけれど、イランがイラクの米軍基地を攻撃したとき、すぎに頭に浮かんだことがある。日米安保条約の第5条、いわゆる日米共同作戦条項だ。

 

 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危機に対処するように行動することを宣言する。」

 

 これって、今回のイランによる攻撃と同じことだ。「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」というのは、日本にある米軍基地への攻撃を含む。例えば北朝鮮がときどき言うように、ミサイルで在日米軍基地を攻撃したとき、日本政府はそれが「自国(日本)の平和及び安全を危うくする」と認定し、「共通の危機に対処する」すなわち日米共同作戦を発動し、北朝鮮に反撃するという意味である。

 

 今回、アメリカとイランの双方が矛を収めたがっていて、少し安心する空気が広がっている。けれども、今回の事態が意味することは、日本にとってまったく他人事ではないのである。日本はその時どう対応するかが問われているのである。

 

 イランと同様、北朝鮮も核開発を進めている。現在は対話路線で進んでいるけれど、あのトランプさんのことだから、どう転んでいくのかは不透明だ。緊張が激化していくことも想定し、いろいろ考えておかなければならない。

 

 イラク政府は今回、自国領土内にある米軍基地が攻撃されたからといって、「自国(イラク)の平和及び安全を危うくする」ものだと認定しなかった。逆に、米軍基地の存在こそが「自国(イラク)の平和及び安全を危うくする」ものだと考え、米軍を追い出しにかかっている。

 

 日本をめぐって同じような事態が起きたとき、日本政府は、あるいは日本国民は、そのようなリアルな判断ができるのか。もしかして、日本人にも米兵にも被害がなかったとしても、すごく感情が高揚し、「北朝鮮をやっつけろ」「初の日米共同作戦を発動せよ」というふうになっていくのではないか。

 

 そうならないためにも、今回の問題を自分のこととして考えなければならない。ということで、明日も連載を続ける予定。(続)