いろいろと書くことはあるが、まず、昨日のジュンク堂三宮駅前店での対談イベント。『日韓が和解する日』の刊行記念で、兵庫県の民団団長の李圭燮(イキュソップ)さんと対談した件である。

 

 我々(わたしだけかもしれないけれど)の中には、民団は韓国系、朝鮮総連は北朝鮮系という、ステレオタイプの思い込みがある。だけど、どの団体だって同じだが、民団だって在日コリアンの願いに正面から応えようとすると、「○○系」としてすべて○○の方針で動くということはあり得ない。

 

 とりわけ韓国の場合、長い軍事独裁政権の時期があって、それにどう臨むのかは簡単なことではなかった。民主化された現在、そこが大きく変わったとはいえ、民団だから慰安婦問題でも徴用工問題でも韓国政府の方針を支持するということにはならないわけだ。

 

 そこの悩みというか模索というか、複雑なところを伺うことができて、どうやったら在日の方とも連携してこの問題を打開していくのかを考える上で、わたしにとっては大いに意味のある対談となった。李さん、ありがとうございました。

 

 韓国の国会議長が提出した法案は、すでに書いてきたけれど、問題を打開する上ではほど遠いものである。2つの面でそうである。

 

 1つは、これが可決されて、おカネを受け取り、請求権を放棄する原告も出てくるだろうが、それが全員にならないかぎり、日本企業の資産差し押さえは続く。だから日本政府が了解することにはならない。

 

 もう1つ、韓国側にとっても、違法な植民地支配」だったからそれと結びついた人権侵害に対する賠償請求権があるという、大法院判決が示した問題には何も応えていないから、司法の判断を無視したものとなる。

 

 ただ、日本企業が訴えられているのに、韓国側から解決のための挑戦が出てきたわけだから、それを大切にしていきたいという気持はある。どうしたら、これが解決に結びつくものになるだろうか。

 

 やはり、わたしが本の中で提起していることなのだが、植民地支配が違法か合法かを曖昧にして締結された日韓条約の解釈を決着させるための外交交渉が大事なのではないか。その交渉を開始することで日韓政府が合意することだ。

 

 交渉の行方は予断を許さないが、交渉が開始されたとなれば、徴用工に対して、「いま韓国政府が努力しているのだから、その間、日本企業の資産売却は止めよう」と説得することができる。日本政府だって、「これで日本企業の資産売却はされない」となったら、設立される財団に日本企業が参加することを黙認できるだろう。

 

 韓国の法案は、こういう努力と組み合わせることができるなら、日本にとっても韓国にとってもウィンウィンのものになる。少なくともその可能性が生まれる。