時々書いているように、出版社に入って最初に編集したのが、『我、自衛隊を愛す 故に、憲法九条を守る』だった。従来型の護憲派の評判はよくなかったけれど、一部の護憲派と護憲か改憲か迷っている人の評価は高く、それ以来、この道を進んできた。

 

 それにしても、自衛官の手になる安全保障論の本を出版するとは、最近まで思いもしなかった。元陸将で日本初のPKO大隊長を務めた渡邊隆さんの『平和のための安全保障論──軍事力の役割と限界を知る』である。

 

 思いもしなかったのは、それだけではない。普通、本ができたら、書評掲載などを期待して、新聞社その他いろいろなところに献本する。この本、これから新聞社などに送るけれども、すでに贈呈した先がある。自衛隊の統合幕僚学校の学校長とか、教育研究訓練本部の教育部長とか、幹部候補生学校の学校長とか、等々である。

 

 そう、この本は、自衛官に読んでほしいと願ってつくられているのだ。もちろん、帯では内田樹さんの推薦を得ているわけだから、安全保障に関心を持つ普通の市民にも読んでほしいけれど、誰よりも自衛官に学んでほしい。

 

 護憲派の私がこんな本をつくっていいのかという批判があるかもしれない。いや、そもそも、もう護憲派の資格はないと言われるかも。いえいえ、以前から言われているとか(涙)。

 

 だけど、じゃあ、護憲派が政権をとったら、自衛官には安全保障論を教えないのだろうか。憲法の教育だけをやって、「あなたたちは憲法上、存在が許されない」と教えるのだろうか。もしそうなら、次の選挙ではそれを公約にしてほしいものだが、それで政権をとれることは絶対にないから、やはりどういう安全保障論を構築するのかは大きな課題なのである。

 

 さて、自衛隊の機関紙である「朝雲」に、この本の広告をカラーで掲載する予定である。「本書の3大特徴」として次のように売り込もうと思うのだが、どうだろうか。

 

○元陸将が40年にわたる現場での体験と模索をもとに執筆、自衛官による初の総合的安全保障論

○各分野における軍事力の役割に正当な位置づけを与えつつ、政府や国民の役割についても指摘

○「軍事か、対話か、その組み合わせか」、複雑な安全保障環境の中で考える力を養うことを重視

 

 現在、出張先の東京から、京都に向かう新幹線。午後は福知山で、『日韓が和解する日』について講演だ。