時期の詳細は忘れたが2003年頃だったと思う。共産党の本部で不破さんが勤務員対象に外交問題で話をする学習会があった。

 

 ほとんどは中国問題だったと記憶する。野党外交が開始され、とりわけ中国に対する批判を控えるようになって、それまでの態度との関係で意見や質問が噴出してきたのだろうと思われた。

 

 それまでは、昨日書いたように、社会主義国にあるまじき行為があらわれたら、それを厳しく(自民党よりも)批判することで、「日本共産党も同類だ」という批判から免れ、国民が離反することを防ごうというのが基本的態度であった。そうではなくなっていたのだから、意見や疑問が出るのは当然だったのだ。

 

 そこで不破さんが語ったことの一つは、中国が国際政治の中で重みを増しつつある現在の世界の中では、中国と密接な関係にあるということが、信頼をかちとれるのだということだった。その頃、両党の関係は非常に友好的で、不破さんが中国に招かれて高い評価を相手から与えられることがあった。

 

 そのなかにはたしかに、中国との関係があることで、日本共産党への信頼が高まるということも、皆無ではなかった。例えば、台湾に対する武力介入路線を公然と掲げる中国指導部に対して、そういう路線では台湾の民心が離れていくので逆効果だと不破さんがさとし、相手も納得したという話も伝わってきて、そういうことなら関係が良いのも悪くはないという感じもしたものだ。

 

 しかし、問題は、良好な関係を保つことを優先させ、批判を控えるようになってしまうと、存在感どころの話ではなくなることだ。常識的には、たとえ良好な関係にあっても、批判すべきは批判するというのが正常な態度だと感じるが、必ずしもそうではなくなる面も生まれた。前回も書いたことだが、天安門事件への批判を20年目にしなかったことは、その最大のあらわれであった。

 

 冒頭に書いた党本部の学習会では、チベット問題が中国の内部問題であることの理由として、これまでチベットが国家として国際社会から認められたことがないことがあげられていた。しかし、そういうことを言いだせば、インドネシアなど東南アジア諸国にせよアフリカ諸国にせよ、自力で独立を勝ち取るまでは、どこも国際社会から国家として認められた前史はなかったのだ。そういうのは独立に反対する理由にはならないものである。チベットの独立を支持するかどうかは別にして、そういうことは中国を批判しない理由にしてはならない性格のものだったと思う。

 

 まあ、いずれにせよ、そういう過去の態度が変わり、重大な人権問題は国際問題だというかつての立場に立ち戻ったわけだ。中国は社会主義どころか社会主義をめざす国でもないという。その結論は支持する。

 

 けれども、この問題から深く教訓を引き出しておくことが、将来間違わないために不可欠だと感じる。戦後、日本共産党が社会主義の問題でどんなことを発言し、どう行動してきたのかについて、詳細な研究をしておくことが大事かもしれない。

 

 私にそれができる能力があるかどうかは分からないけれど、12月21日のシンポジウムは必見である。申込みが殺到しているので、早めに申込みしないと参加できないかも。何か月後かには本にするけれどもね。