遠くから香港を見ていると、流れるニュースが過激な若者の姿が大半なものだから、少し心配になってくる。日本でもああやって、運動についていけなくなった若者があり、広い国民の支持を得られなくなった過去を思い出すからでもある。

 

 ところが、そうでもないらしい。また「朝日新聞」の昨日の夕刊の話題なのだが。

 

 「同じ「山」めざす 穏健派も強硬派も」というタイトルの記事が載っていた。台北支局の西本秀記者の記事だ。私のように心配する読者がいるだろうからとわかっていて、この記事が必要だと思ったんだね。「結論から言うと」として、こう書いている。

 

 「積極的支持から消極的黙認まで、今なお多くの市民が抗議活動を許容しておりまだまだ続くと、私は思う」

 

 たしかに若者のバリケードなどで混乱し、通勤の足にも影響しているわけで、迷惑は迷惑なのだ。ところが、そう思いながらも、抗議する若者に激励の拍手を送る人が多いと描かれている。

 

 その根源には香港当局のというか警察の、あまりに横暴なやり方がある。同時に、それに加えて、運動の側の成長があるらしい。

 

 あの「雨傘運動」のときは、穏健派と強硬派の二つの路線があり、それが結局対立した。それが挫折につながった。

 

 今回、その時と異なり、運動にリーダーがいないように思えるのに、その対立がない。一方で穏健派が主催する集会には100万の規模で人々が集まり、他方で黒服の若者が警察に投石をしているが、うまくやっている。記事は、こう結ばれている。

 

 「双方を結ぶスローガンは「兄弟爬山(兄弟で山に登る)」。互いが同じ目標に向かう仲間――という意味だ。険しく危うい山道を、香港の人々は共に歩んでいる」

 

 挫折を経て、たくましく成長しているんだね。納得できた。

 

 記事を書いた西本さんの着眼もすばらしい。西本さんとは彼がまだ中国新聞(広島を拠点とする)にいた頃、米軍機の低空飛行問題で意見交換をした間柄。十数年前、長野に講演に行ったら聞きに来ていて、なぜ広島から来たのかと思っていたら、「朝日に転職しました」だって。最後にお会いしたのは、2年ほど前、長谷川三千子さんや井上達夫さん、伊勢崎賢治さんと4人で憲法問題の討論会に参加したときだったか。西本記者の成長もめざましい。