まずは条例の撤回を喜びたい。香港の若者には敬意を表する。

 

 若者の代表が述べているように、条例の撤回は要求の一つでしかない。「普通選挙の実施」などの要求は実現していない。私自身はこれらの要求を強く支持する立場であるが、そのための闘争をどう組織化するかは、考え処だと感じる。

 

 ここまで到達したのだから、このまま突っ走ろうというのが、若者の中のそれなりの流れとして存在している。だが、この目標を実現するという立場に立ったとき、果たしてそれでいいのかは、よおく考えてほしい問題である。

 

 問題になった条例はわかりやすかった。これまでは香港の中で暮らしていたのに、ある日、共産中国に連れ去られる可能性があるというのだから、隣同士で実態をよく知っているだけに強い反発が生まれたのである。香港の現状を維持しようというのが運動の目標であり、それが達成され、現状は維持されたのが現時点である。既存の権利を守るという点で、共通の目標となり得た。

 

 しかし、「普通選挙の実施」は、現状を大幅に変えることだ。それがいろいろな要求を実現するため、根本的に必要なことは理解する。ただ、既得権の擁護とは違って、変えた先に何が来るかは、実体験でわからないだけに、すべての人が共通のイメージを持ちにくい。

 

 しかもこれは、共産中国の支配に楯突く状況を生み出すことである。条例の撤回なら、中国だって「これまでと同じ状態が維持された」と、表向きは冷静さを装っていられるが、普通選挙となるとそうは行かない。しかも、香港で普通選挙を実施するとなると、じゃあ中国本土ではどうするのかという議論は沸き起こってくる。中国共産党の支配体制を揺るがす問題だけに、今回は威嚇だけで済んだが、次はそうは行かないだろう。

 

 まあ、外から見ているだけだからわからないのかもしれないが、香港の人々は、そのときに備える覚悟ができているのだろうか。弾圧があればあるほど、団結が固まるだけの覚悟である。それが若者だけでなく、年齢、階層を超えて、香港の人々共通のものになっていないと、若者が孤立していくことにもなりかねない。

 

 「すべての人々が起ち上がっています」と報道されるくらい、幅広い人々が結集する運動として、今後は継続していってほしい。頑張ってください。