いちおうは「科学的」でありたいと願っている私が「呪い」などという言葉は使いたくない。しかし、植民地支配、とりわけ隣国に対する支配がもたらしたものを考えると、そう言わざるを得ない現実がある。

 

 日本と朝鮮半島のことだけではない。イギリスがEU離脱問題で苦しんでいるのも、アイルランドを2世紀前に植民地支配したことの呪いのようなものだ。

 

 イギリスのEU離脱で最大の問題になっているのはアイルランドとの国境問題であることはよく知られている。アイルランド島は南部にアイルランドという国家があり、北アイルランドはイギリスの一部となっている。イギリスの支配から独立するにあたり、プロテスタントの多い北部は独自の扱いとなったわけである。そのことがIRAによる武装闘争を生み出し、何千人もが犠牲になったことは記憶に新しい。

 

 現在、平和合意ができて落ち着いた状態が続いてきたが、それを側面から支えたのがイギリスもアイルランドもEUの一部だったことだ。人もモノも自由に行き来できるということで、北アイルランドとアイルランドの間で国境管理が不要になった。ギネスビールはアイルランドで製造され、北アイルランドで瓶詰めされて出荷されるという。

 

 アイルランドは北アイルランドの領有権放棄を明確にしてイギリスの不安に応えた。一方、北アイルランドの将来は自治に任されているので、アイルランドへの帰属を決める可能性も残されている。そういう微妙な安定がEUの一部であることによって保証されていたわけだ。

 

 イギリスがEUを離脱するとなると、再び国境管理が必要になる時代がやってくる。そのことが再び以前のように紛争状態をもたらさないのか。そういう角度から、イギリスとEUが国境管理についていろいろ模索し、合意しているけれども、それがイギリスで支持を得られていないというわけだ。

 

 植民地支配はいろいろあれど、隣国を支配したのは、日本とイギリスだけ。何千年も紛争を抱えながらも隣国であった国を支配するのは、そういう結果をもたらすというkじょとだ。支配から200年経ってもアイルランドの呪いから抜け出せないイギリス。日本の100年なんか、まだまだ子どもなのかもしれない。