今回の出張ではいろいろやることがあった。そのうちの1つは、「日本経済への新提言」研究会(仮)をつくるための準備だった。

 

 この数年間、戦後日本で不動とされてきた安全保障政策をどう捉え、どう対案を足していくのかに没頭してきた。そして、この分野では、「自衛隊を活かす会」の一連の作業によって、少なくとも私個人にとっては、「これでなんとかなるのでは」と思えるものが見えてきたと感じる。政治の場にある人たちが、とりわけ自民党に替わって政権を担おうという気概のある野党の人たちが、その成果を我が物にしようとする気持ちがあるかどうかは別問題だが、その気になったときに役に立つ程度のものはできていると思う。

 

 同時に、同じようなものを経済の分野でも出さなければならないという問題意識は、ずっと持ちつづけてきた。だから、安全保障と同じように、これまで政府のなかで大事な役割を果たしてきた人たちにアプローチし、経済官庁の事務次官を経験した人たちの本も出して、問題意識を交流してきたりもした。私の大学の同期で大企業で華々しく活躍してきた人とも、ようやく定年が間近ということで、接近をはかってきた。

 

 さらに言えば、この分野での理論的混迷の根源にあると思われる問題を、何とか克服したいと考えてきた。当面は資本主義の原理で動く社会の枠内でものごとを考えるが、将来は資本主義の原理を否定するという理論では、国民に支持されるだけの一貫性もないし、足並みが乱れるだけなので、別の理論的な枠組みが必要だと考えてきたのだ。

 

 しかし、あまりに気宇壮大な作業だし、私も歳をとって疲れてきたし、「そろそろ引退しよう」と昨年あたりから考えて、引退の準備をしてきたのだ。けれど、いろんな方から「それではダメだ、最後のふんばりを」という働きかけもあって、実現できるかどうかわからないけれど、頑張るだけは頑張るかと気持ちを立て直したのである。

 

 ということで、そのための準備会みたいなものをつくったのが、今週の火曜日だった。あまり名前は知られていないが、新進気鋭の有能な若手経済学研究者等(等が何を指すのかが微妙だけど)とのスタートだ。

 

 とりあえず、どんなことをすれば真理に近づけるのか、それをいろんな人に意見を聞き、どんな人を研究会に加えていくかが作業の中心かな。最初の作業は、「日本経済への提言」を作成する中心にあった工藤晃さんに、来月お会いし、いろいろご意見を伺うこと。

 

 さあ、何年かかるやら。引退していられないよ。