昨日、東京にやってきて弁護士会館へ。日弁連の入っているビルだ。日弁連のなかに憲法問題対策委員会という機構があって、憲法問題が焦点になっている現在、護憲の立場で旺盛に活動を続けている。その委員会が、陸上自衛隊の元陸将である渡邊隆さんのお話を聞きたいというので仲介し、そのついでに本の販売でおじゃました次第である。

 

 ここ数年、自衛隊を代表してきたような方々と市民運動が同じ空間で議論する場を提供してきたという自負があるが、それもここまで来たということが感慨深い。柳澤協二さんまでならこれまで呼ばれていたけれど、幹部自衛官と護憲派弁護士のコラボなんて、少し前まで考えられなかったことだと思う。

 

 終了後、数名規模の懇親会があって参加してきたが、そこでの交流も面白かった。ある弁護士が、「これから自衛隊法を読んでも、その読み方が変わるかもしれない」とおっしゃっていた。そう、これまで護憲派というのは、自衛隊に関していろいろ勉強している人であっても、自衛隊の外にいて、自衛隊を批判するという角度からしか深めてこなかった。それはそれで大事だけれど、ある問題を勉強する際に、その問題の当事者の考えをどこまで知っているかは大事な問題だ。

 

 例えば、分野は別だが、昔は大企業批判をするといっても、大企業のそれなりの地位にある人の中に、いろいろと協力してくれる人がいた。だからあるリアリティをもって批判できたのだ。

 

 ところが最近は「大企業=悪」が前提になって、多くの人がそれを唱えるけれど、誰も大企業で仕事すらしたことのない場合がほとんどだ。その種の批判は、大企業につとめる人はもちろん、そのもうけのおこぼれで暮らしていると思い込んでいる人には響いてこない。

 

 同様に、自衛隊違憲論をはじめ自衛隊を批判する場合でも、できるだけ自衛隊を代表するような人の話を伺い、そういう人の立場からも事実関係を捉えてみたりすることが大事だ。そういう作業をして、そういう当事者が、批判に賛成できないまでも、「ああ、よく現場を知った上で批判している」と思えるようにならないと、国民の多数にも響いてこないように思う。

 

 さあ、憲法問題が焦点になってくる参議院選挙後、どこまでそういう作業ができるのだろうか。まだまだやるべきことは多い。