参議院選挙が公示された。その前日、恒例の日本記者クラブ主催による党首討論会。論点はいろいろあるけれど、安倍さんがあまりに正直者なのでびっくりした。

 

 改憲のことである。このブログですでに書いたように、自民、公明の与党で3分の2を維持することは不可能で、そもそも与党だってそれを目標にしていない。だから、改憲のことを考えると、与党にとっては野党の協力が不可欠という状況が生まれるわけだ。

 

 もともと、与党が3分の2あったとしても、憲法という重大問題で与党のみで強行することは政治的に無理なことだった。3分の2を割り込むことで、ようやく改憲の機が熟するといっても過言ではない。護憲勢力にとっては正念場を迎えるのが参議院選挙後である。

 

 ところがだ、安倍さん、昨日、改憲で手を組む相手として、維新(これは以前からだが)とともに「国民」だけの名をあげてしまった。党内には改憲という立場の人もいるということで名前をあげたのだが、そんなことを言いだせば「立憲」にだってもともと改憲の人は多いのに、その名前はあげなかった。

 

 正直というか、なんというか。立憲の枝野さんの態度が硬いということで、協力を得られないことを見通したといいうことなのだろうが、これは志を成し遂げようとする政治家のやることではない。

 

 立憲と国民の両方に協力を呼びかけて、努力して説得して、しかし立憲が協力しないというなら、国民は与党になびく芽が出てくる。けれど、選挙の前から協力相手として名指しされたら、選挙で掲げている「安倍政権のもとでの改憲阻止」というスローガンだって国民にとっては破ることになるスローガンということになって、選挙だって闘いにくくなるだろう。

 

 安倍さんは、自分が身を引くことで、「安倍政権のもとでの改憲阻止」を無力化するだけの執念もなさそうだ。その上にこういうことだから、護憲勢力にとっては、この安倍さんの未熟さが頼りということになるのかなあ。