先日、散髪をしていたら、流れているラジオ番組で、「空母いぶき」の主演をしている西島秀俊と佐々木蔵之介が出演していた。とくにこの映画に関心があったわけではないので(というか、また百田さんの映画のようなものかなという先入観しかなかったので)、ボヤッと聞いていた。

 

 そうしたら、お二人のうちどちらかわからなかったが、この映画のポイントについて、「憲法9条によって相手から攻撃されない限り反撃できない日本はどう戦えるのかだ」と解説していた。俄然興味が湧いたので、今週中にでも観に行くつもりだ。

 

 いま、陸上自衛隊の大幹部(陸将)だった渡邊隆さんにお願いし、『13歳からの安全保障』という本を書いてもらっている。もとになっているのは大学での1年間の講義録で、これがなかなか深いし、素人の学生相手の話なので、とってもわかりやすい。安全保障論の本はたくさん出ているが、自衛官が書いたもので、本格的なものはほとんど存在しないので、注目されることになると思う。

 

 渡邊さんの講義のキモは、やはり自衛官らしく「シナリオ研究」なのだ。「こういう場合にどうするか」ということで、それこそが自衛官ならではの部分というか、銃さえもったことのない私などが書いても欠けている説得力がある。だけど、ここって、なかなかテキストで伝えるのが難しいところで、どうするか悩んでいたのである。この映画、きっと参考になるのではないかな。

 

 私が共産党に勤めていた当時、すでに「侵略に対しては自衛隊で反撃する」と大会で決めたいたのに、現場ではそういう考えに反発が強かった。いまどうなっているか知らないが、中央委員会に対して同様の質問があっても、担当部門は「憲法9条があるのに侵略など想定してはいけない」と答えていた。

 

 それから長い時間がたって、「すぐに自衛隊は廃止する」とか「自衛隊は使わない」という護憲派は減ってきた。だけど、それは建前でしかない人も多いので、踏み込もうとすると反発も多い。シナリオ研究もその最たるものだろう。

 

 だけど、シナリオがあるから訓練もあるし、それに必要な武器もわかってくる。「どんなシナリオもアメリカのためで、日本侵略のシナリオは存在しない」というのでは、シナリオどころが、訓練も必要なくなるし、自衛官はずっと宿舎で昼寝をしていればいいということになりかねない。

 

 どうやって説得力あるシナリオをつくるか。考えなくちゃ。