トランプさんの訪日と首脳会談その他、とくに見るべきものはなかった。ただ、安倍さんが対イラン外交で仲介しようとしていること、それにトランプさんが了解を出していることは、なかなかに興味深い。

 

 日本は70年台前半、中東地域でアメリカがイスラエル寄りの外交をやっているとき、それなりに独自性をもってイランをはじめアラブ諸国との関係を築いた。当時、「アブラのためにアラブよりに」なんて揶揄されたが、石油ショックの最中、エネルギーの安定供給を確保するために外交努力するのは国益にかなっていたし、その結果がイスラエルの軍事行動を支持しないことになったのも意味のあることだった。

 

 安倍さんはその頃から培った経験を生かそうということらしい。イランの外相が最近訪日し、河野外相と会談していたのも(写真)、日本に対する期待があるのだと思う。

 

 ただ、対イラン外交は難しい。同じ核開発で問題になっていても、イランと北朝鮮とでは、アメリカの姿勢は全然違っている。一言でいえば、イランにきびしく北朝鮮には甘く、というのがアメリカ外交だった。それだけアメリカの政治指導者にとっても国民にとっても、イラン革命や大使館人質事件が陰を落としているということなのだろう。

 

 だから、普通に考えれば、対北朝鮮外交でも役割を発揮できない日本が、対イラク外交で何らかのことがやれるはずがないと思う。ところが安倍さんは自信満々だ。常識的に言うと、何か成算がないと、こんな態度はとれないだろう。うまくいかなかったら、「やはりね」と言われるだけなのだから。参議院選挙前に失点したくないだろうし。

 

 ということで、安倍さんの対イラン外交に期待を表明しておく。この地域の平和と安定のために何らかの成果をあげてほしい。いま期待値を上げておかないと、少しの成果が選挙前の大宣伝につながっちゃうしね。

 

 ただ、1つだけ心配なのは、やはり何の成果もあげられないことだ。あれだけイランと親密な日本の首相が説得してもイランが翻意しなかったということを確認するためだけにイランを訪問する結果になることだ。

 

 そうなると、トランプさんの軍事圧力路線を側面支援することになる。そうであってほしくない。切に。