慰安婦問題の際も、韓国側はこれを「違法だ」「日本の国家犯罪だと認めよ」と主張し、最後まで日本の主張とかみ合わなかった。徴用工問題でも、「違法な植民地支配と直結」しているから賠償せよと韓国は主張し、日本側の「解決済み」論とかみ合わない。

 

 かつて植民地だった国は100近くあると思うが、宗主国との間で「違法性」を争っているケースは、いったいどの程度あるのだろうか。いや、一般的にはそういう主張をしている国は多いと思うが、それで裁判までしている国はそう多くはない(部族皆殺しなどで訴え勝利したケースはあるのは承知しているが)。

 

 『日韓が和解する日』を書き進むに当たって、そこをどう捉えるかが大事になってくる。難しい問題だけど、つらつら考えている。

 

 「外国人による人民の征服、支配及び搾取は、基本的人権を否認し、国際連合憲章に違反し、世界の平和及び協力の促進の障害になっている」

 

 これは、一九六〇年、国連総会が決議した「植民地諸国と人民に独立を付与する宣言」の一部である。植民地支配を違法だと宣言したもので、採択に付された際、さすがに反対する国は一つもなかった。けれども、植民地を抱える国を中心に九か国が棄権にまわり、そういう国が違法性を認めたわけではなかったので、当時、植民地支配が違法だと言い切れなかったのが現実である。しかし、その後、現在まで、八〇〇〇万人以上が住むおよそ六〇の旧植民地が独立を達成したことにより、この宣言は確立した国際法だと考えられるようになった。いまや植民地支配は違法なのである。

 

 この宣言以前から植民地支配が違法だったのかについては議論がある。ただ、朝鮮半島の人々が当時から違法だったと考えたのは、世界の他の植民地の人々と比べても、それなりの理由がある。

 

 まず、いま引用した宣言の一部にあることだが、外国による「人民の征服、支配」を問題にしていることに注目してほしい。「国家の征服、支配」ではないのだ。そこに「人民」が住んでいれば、「国家」があろうとなかろうと、征服、支配をしてはいけないというのが宣言の立場なのである。あるいは、ある地域で支配を及ぼせるのは、そこに住んでいる人民だけという立場なのである(人民の自決権)。

 

 これは世界の大方の植民地の歴史を見れば理解できるであろう。植民地支配が開始された当初、そこにはその地域流の部族、民族などのまとまりはあっても、現在のような国家も国境も存在しなかった。西欧列強は、欧米流の主権国家がないとみなした地域の征服、支配は合法だと考え、どんどん植民地を拡大していくのである。そうやってつくられた宗主国同士の国境が、現在の国家となっていくのである。倫理的に見て許されることではないが、欧米諸国の、欧米諸国による、欧米諸国のための国際法というのが、当時の現実であった。

 

 朝鮮半島はそこが違うわけだ。そこには国家があったわけだから。写真は、青いところが植民地独立付与宣言以降に独立した地域、赤いところはまだ植民地のままの地域。(続)