本日から東京。10日までで、前半は私用、後半は仕事。

 

 新幹線に置いてあった「Wedge」を読む。これも特集は「平成から令和へ 新時代に挑む30人」。どこに行っても同じだなあ。東京駅を降りて聞こえてきたシュプレヒコール(おそらくメーデーだろうね)を聞いてホッとした。

 

 まあ、でも、「Wedge」の中にも読ませるものはある。30人のうちの1人は東芝エネルギーシステムズのエンジニアで、福島第一原発の廃炉プロジェクトを統括している人だった。何かを生み出すわけではない後ろ向きの仕事だけど、何をするにも世界ではじめての挑戦となることを貴重と捉え、意欲を持って立ち向かう気持ちがあふれていて、気持ちが良かった。

 

 いつ見てもどうしようもないのが、「国防の盲点」という連載。読売新聞で防衛問題を担当してきて、いまは大学の先生をしている勝股さんという方が書いている。今回のタイトルは「隊員募集を妨げる「自衛隊アレルギー」」。安倍さんが自治体の協力が得られないから改憲をと述べた、あの問題である。

 

 事実関係はおおむね正しい。少子化と大学進学率の向上などで、自衛官として募集対象の18歳人口は、1992年の70万人から今年は19万人に減っている。その中でどう自衛官を確保していくかは大事な問題だと考える。

 

 しかし、その方法は筆者が唱えるように、あらゆる自治体が義務的に募集業務に率先協力することではないと思う。自衛隊というものを、若者が「ここなら入りたい」と思わせるものにしていくことだ。

 

 防衛大学校の一期生で、統合幕僚会議議長を務めた佐久間一氏が、退官の日に語った言葉を筆者は引用している。次のようなものだ。

 

 「自衛隊の任務の高さ、尊さは、我々を無視し、あるいは非難する人々も含めたすべての日本人の平和と安全を守ることにある」

 

 これって、一昨年亡くなった泥憲和さんも、自衛官時代の教官が同じような言葉を語っていたこととして紹介していた。『泥憲和全集』をつくった際、多くの著名人が追悼エッセイを寄せてくれたが、憲法学者の樋口陽一さんが泥さんのこの言葉に感銘したことを書いている(元防衛官僚の柳澤さんも期せずして同じことを書いていた)。

 

 つまり、佐久間さんのそういう言葉は、自衛隊違憲論者の心さえ動かすようなものなのだ。そこを大切にすることこそ、自衛官になりたいという若者を増やすことにもなろう。

 

 ところが、「Wedge」の筆者は、佐久間さんの言葉を「二度と言わせてはならない言葉」と受け止める。そして、自衛隊募集に関する「新たな法令等を準備する」ことを提唱する。

 

 これでは、自衛隊が戦後ずっと努力し、つくりあげてきたものは崩壊するのではないか。安倍さんも同じであるけれど、困ったことである。