結局、誰にも相手にされなかったね。挑発して相手を動かす戦術だろうけれど、アメリカに届かないのに、トランプは動かない。自衛隊の統合幕僚長だって、とくに日本には影響がないと発言していた。

 

 もし噂されているように、それが巡航ミサイルならば、韓国の安全保障にとって無関係とは言えない。しかし、いまや韓国は北朝鮮の友好国のようなものだから、その韓国だって動かないわけだ。

 

 国連決議で禁止されている弾道ミサイルか核兵器の実験でないと誰にも相手にされないと分かって、金正恩はどうするのだろうか。核ミサイルを保有することが自国の安全にとっても、自分の国内支配の維持のためにも不可欠という構図から抜け出すのは、やはり容易ではないのだ。

 

 それとこの間、不勉強な報道もよく見かける。例えば昨日の読売新聞。北朝鮮が挑発路線に戻った理由として、第二回米朝首脳会談において、完全かつ不可逆的で検証可能な非核化の一環として、トランプが北朝鮮が保有する核兵器を海外に運び出すという過激な要求をするに至ったことをあげていた。

 

 しかし、完全な非核化をやろうとすれば、そういうプロセスが必須なことは、金正恩だって分かっているはずだ。だって、94年の枠組み合意に基づいてアメリカの作業グループが北朝鮮に入国し、使用済み核燃料を8000本の缶に詰め込む作業をしたのも、将来の海外への搬出を前提とした作業だった。当時は使用済み核燃料だったが、核兵器を保有するに至った現在、核兵器の海外搬出が求められるのは当然のことである。

 

 問題は、寧辺の核施設の廃棄という部分的な措置を持ってきて、アメリカに見返りを求めるやり方だろう。全核兵器の海外搬出までの完全な非核化をいつまでにやるのかを明確にし、それに対応してアメリカは何を提供するのかを明らかにさせるようなやり方でないと、このまま不安定な膠着状態が続くことになるのではないか。