昨日、日本政府が韓国に助け船を出すアイデアを書いた。それをもう少し深めてみる。

 

 日韓の両政府間の関係は最悪である。ガチンコ対決みたいになっている。そこを打開するには、通常でないアプローチが必要だと思うのだ。

 

 韓国政府も困っている。何と言っても最高裁判所の判決だから、それに従わないと問題にされる。

 

 いつだったか忘れたが、最高裁判決を放置していて、「不作為(何もしないこと)」で違憲だと指摘された過去もある。韓国憲法は、「(植民地下の)3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」という伝統を受け継ぐとされる。すなわち植民地反対が建国の理念なのであり、植民地の違法性に立脚した徴用工問題での判決を無視すると、政府まで憲法違反をしていることになるのだ。

 

 一方、文在寅大統領は盧武鉉政権下で要職にあったとき、徴用工問題は請求権協定で解決済みという立場をとった。韓国政府が補償すべき問題だというのが、文在寅大統領のもともとの立場だったわけだ。しかし、その立場を表明すると、憲法に違反することになる。大統領が憲法違反を堂々とできるはずがない。

 

 他方、日本政府も、このままでは打開策が見えないだろう。いくら韓国は国際法違反だと叫んでも、事態は韓国の施政権下で動いているのであり、影響力を及ぼすことはできない。対抗措置といっても、制裁などに訴えれば、国際世論はついてこない。

 

 両方とも困っているわけだ。それなら、日本政府のほうから打開策を提示したほうが、結局は得をすることになると思うのだ。韓国政府にも感謝してもらえるし、日本企業にも実害が及ばない打開策である。

 

 それが、昨日の案である。まず、日本企業に実害が出た場合、その補償は韓国政府が行うという立場を示す。請求権協定が正しいという立場に立てば(これまで韓国政府はそういう立場だった)、協定を超えるような賠償を日本に求めることはできないわけだから、自然な案だ。

 

 しかし、韓国政府がそれを実際にやると、請求権協定は間違っているから賠償せよという大法院判決から外れるので、憲法に違反することになる。だから、同時並行的に、日本企業に賠償を求めるなら、協定の改定を待ってやるべきだと示すのである。

 

 そうすると、韓国政府は、大法院判決にそって努力していることになるので、憲法違反は指摘されない。原告も韓国政府が努力していると納得できる。一方、日本政府は、改定交渉を続けている限り、日本企業の損害を心配しないで済む。韓国への助け船に見えて、実は日本政府にも利益がある。

 

 こうして、何年、何十年かかるか分からないが、頭を冷やして交渉を続ければいい。本格的に植民地支配問題を議論すればいいのだ。